望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

候補者の迷惑行為

 統一地方選挙が始まった地方都市に住んでいる友人から電話があり、「候補者ってのは、当選するためには何をやっても許されると考えているんだな」と静かに怒っている口調で言い、「あんな候補者が当選して議員になったら、大威張りで好き勝手に振る舞いそうだ。マナーも法も気にかけず、ほかの人々の迷惑も考えずに、自分がやりたいことだけをやりそうだ」と言う。

 何があったのかを問うと友人は「駅前の交通量が多い通りで、候補者の名前を大きな音量で連呼する3台の選挙カーが連なって走っていたが、窓から運動員が上半身を出して、大きく手を振り、笑顔を振り撒いていた」「1人や2人ではなく、3台の助手席と後部座席の両側から運動員らが身を乗り出していた」と言い、「交通量が多いので、周囲の車に気を使わせていた」とする。

 窓から身を乗り出すにはシートベルトが邪魔になるが、友人が警察に問い合わせたところ、選挙の候補者と運動員にはシートベルト着用義務が免除されるそうだ。「窓から上半身を外に出す行為も許されるのか? 若者らが同じように窓から上半身を出して走っていても許されるのか?」と友人が聞くと、「そんな行為は取り締まりの対象になる」と警察。

 「それなら、なぜ選挙カーで窓から上半身を外に出して手を振る行為を取り締まらないのか」と友人が聞くと、「そういう現場を確認した場合には注意している」と警察は答えたそうだ。だが、パトカーが選挙カーを止めて実際に注意したりできるのか、友人は疑っている。「候補者が当選して地方議会議員になれば警察の予算に注文をつけることができるからな」と友人。

 この話を首都圏に住んでいる友人に話すと、「俺が以前に見たのもひどかった」という。「朝、通勤・通学の人々で混んでいる駅前広場を、名前を書いたノボリを立てた自転車が7、8台、けっこうなスピードで走り抜けた。候補者や運動員が手を振って愛嬌を振り撒いていたが、ちょっとでも通勤・通学の人に接触したら大ケガをさせていたかもしれない」と言い、「人混みを突っ切ってくる候補者らが乗った自転車を見て俺は横に動いて身をかわしたが、腹が立ったなあ」。

 選挙カーから候補者や運動員が上半身を出してアピールする行為は各地で珍しくないようで、見かけた人々から自治体に苦情が来たりするという。選挙管理委員会が立候補予定者に注意喚起しているそうだが、当選を夢見て気分がハイになり、「選挙戦の恥はかき捨て」と勢い込んでいる候補者らには効果は限定されるようだ。自粛を求めていると選管はするが、おとなしく自粛するような候補者はどれだけいるのか定かではない。

 選挙カーは「車両通行止め」「駐車禁止」などの規制からも除外されるそうで、地方都市に住んでいる友人は「20世紀半ばから選挙運動の形態はほとんど変わっていない。ネットの活用などで21世紀の新しい選挙運動に変化させるべきだ」とし、「地方議会議員の選挙などは公営の部分を増やして、街頭活動を減らすのも一案だと思うよ」と言う。議会議員選挙に立候補する人がいない地域があるというが、街頭活動をなくせば立候補する人が増えるかもしれないな。