望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





69万票で落選

 2010年の参院選で当時の千葉景子法相は69万6739票の得票で、神奈川選挙区では4位で次点となり、落選した。3位当選した金子洋一氏の得票は74万5143票だった。ちなみに全国で最も得票数が多かったのは東京選挙区の蓮舫氏で171万734票を得た。



 69万票以上を取りながら落選した候補者がいる一方で、10万票台の得票で当選した候補者が4人いた。その選挙区は山梨、鳥取、徳島、高知で、山梨で当選したのは18万7010票を獲得した民主党参院議員会長の輿石東氏。高知選挙区で当選した広田一氏は13万7306票の得票で、選挙区の73当選者中の最低獲得数だ。



 千葉景子氏の69万6739票は、落選者中の最高得票数だ。2位は大阪選挙区の岡部まり氏で得票数は61万7932票。ちなみに50万票台を獲得しながら落選した候補者は4人、40万票台で落選したのは4人、30万票台で落選したのは10人、20万票台で落選した候補者は26人いた。



 千葉景子氏の69万6739票は、当選した広田一氏の13万7306票の5倍強になる。つまり千葉氏の得票数に並ぶには広田氏が5人必要になる。言い換えれば、神奈川県民の1票は、高知県民の1票の5分の1以下の価値しかないことになる。過疎地って、優遇されている?



 広田氏の当選は民意を反映したものなんだろうが、千葉氏の落選は民意を反映したものと言えるのだろうか。選挙区での73人の当選者中、千葉氏の69万6739票以上の得票数で当選したのは14人だけだ。得票数でいうなら先の参院選で千葉氏は全候補者の15位と上位にいる。そんな候補者が、選挙区で73人が当選した先の参院選で落選した……日本の選挙は民意の反映をあまり気にしないようだ。



 国勢調査結果に基づいて適時、選挙区割りなどを調整することが必要だと、ずいぶん以前からも指摘されているが、いつまでたっても国会は動かない。民意をできるだけ正確に議会構成に反映するという基本的な改革さえ、しようとしない国会。国民には、痛みを感じる改革を押し付けるのにね。



 選挙区割りが適時、変更されるようになると、せっかく築いた後援会組織がガタガタになりかねず、互いに事情を慮って国会議員の動きが鈍いのだろうが、そうしたことを承知の上で、先の参院選で69万票以上を獲得しながら落選した人を批判する国会議員は、相当の腹黒か相当のマヌケだな。