望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

お粗末な連中

 凝った内装で、和風をベースにした料理を出すオシャレな居酒屋が増えたが、そんなところで BGMに流れているのはジャズが多い。ジャズはオシャレなBGMとして根付いたとも言えそうで、ファッションとしてのジャズを巡る動きには固いことは言わないが、評論家やレコード会社がいいかげんであっては一言言いたくなる。

 Sonny Stittの「ONLY THE BLUES」というCDを購入した。パッケージの外側の日本語による紹介などが印刷してあるところに「珍しくブルースだけを収めた一枚」とあり、ブルースが好きなので期待して聞くとビックリ、1曲目の「THE STRING」は32小節だった。

 32小節とはスタンダードなどに多い曲の構成で、12小節のブルースとは全く違う。ブルースには8小節、16小節などもあるが、スタンダードなどの32小節の曲をブルースと同類にすることはない。

 中身を聞かずにレコード会社の奴が書いたのかと思いながら、岡村融という人物が書いている解説を読むと、またビックリ。「アルバム・タイトルが示すように全曲自身のオリジナルの、最も得意とするブルースで占められている」とあるではないか。こいつも中身を聞かずに書いたのか、それとも、聞いても、ブルースと32小節の区別ができなかったのか。どちらにしても、お粗末だ。

 ブルースも32小節も、どちらもジャズではよく演奏されるものだから、混同するようではジャズファンの資格なし。えっ、ジャズっぽければ何でもいいって? まあオッシャレですこと。

 演奏は楽しめたし、「B.W.BLUES」ではOscar Petersonのブギウギピアノを聞くこともできるので、中身には不満はないが、周囲のお粗末さが印象に残る。