望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

自分で健康管理

 家族の誰か1人が感染者になった場合、同居家族の自宅待機期間を厚労省は「感染者の発症から7日間」に見直すとした(従来は最長17日間の待機)。10歳未満を含め若年層の感染が急増しているが、看病などで親が休職せざるを得ない日数が短縮される。ただし、家庭内で感染対策を行わない場合は、従来と同じ最長17日間の待機となる。

 急激な新規感染者の大量増加で保健所の業務が回らなくなっているとされるが、政府に助言する専門家の有志が、重症化リスクの低い感染者の健康観察の省略を求める提言を行ったという。重症化率や致死率が顕著に低下していることも背景にある。

 提言は報道によると、基礎疾患などがない6~49歳の人が無症状や軽症だった場合、保健所が行う健康観察や濃厚接触者の調査を省略する。また、症状が悪化した場合は患者が自分で保健所などに連絡し、健康観察を受ける。従来の感染症対策が新型コロナウイルスに白旗を上げ、感染経路の追跡などを放棄せざるを得なくなった形だ。

 濃厚接触者の調査・認定は保健所が行ってきたが、感染者と誰が「いつ」「どこで」接触したかを、感染者の発症2日前から療養期間中までを対象に聞き出すのだから手間がかかる。爆発的に新規感染者が増加しているのだから、そんな調査・認定が感染爆発に追いつくはずがない。

 無症状や軽症の感染者や濃厚接触者に自主的な管理を求める状況は、事実上、重症化しないだろうから自分で何とかしてねーということだ。新型コロナウイルスのオミクロン株による感染に対して、国による管理レベルが低下して打つ手が乏しくなったことであり、人々は自力で新型コロナウイルス(オミクロン株)に対応する状況に転じたことを示す。

 とはいえ、人々が自力でオミクロン株に対応するのは簡単ではない。不安に駆られて万全の健康観察や治療を求めて人々は保健所や病院などに指示を求めるが、それが限られるとなった。人々は、自己判断と自己責任で対応するしかない。特効薬が配布されるわけでもないので、解熱剤や風邪薬などを服用して安静にしているしかない。

 自力で対応せざるを得ない状況で、無症状の感染者や濃厚接触者の中には、保健所に管理されるメリットを感じない人々もいるだろう。保健所に管理されなければ、体調が良くなれば自宅待機期間に関係なく出歩くこともできる。オミクロン株による感染爆発は日本における従来の防疫体制を崩壊させた。