望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

中国の挑戦

 G7サミット(主要7カ国首脳会議)は共同宣言で、中国に「特に新疆との関係における人権及び基本的自由の尊重」を求め、さらに「英中共同声明及び香港基本法に明記された香港における人権、自由及び高度の自治の尊重を求める」とした。経済面では中国が「世界経済の公正で透明性のある作用を損なう非市場主義政策及び慣行という課題」だとした。

 さらに共同声明は「台湾海峡の平和及び安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的な解決を促す」とし、「東シナ海及び南シナ海の状況を引き続き深刻に懸念しており、現状を変更し、緊張を高めるいかなる一方的な試みにも強く反対する」と武力による拡張主義的な行動を続ける中国を牽制した。

 また、パンデミックは世界的な「経済上の強靭性に対するリスクを例証した」とし、「重要鉱物資源及び半導体のような分野で、極めて重要な世界的なサプライチェーンの強靭性に係るリスクに対処するためのメカニズムを検討」するとした。「全ての人に対する開放性に関して強靭であり、開かれた市場、透明性及び競争という我々の共通の原則を保つに際してのリスクに対処可能であることを確保」すると、中国などに対する警戒感を確認した。

 続いてNATO北大西洋条約機構)も共同声明で、「権威主義的な政権との争いに直面している」と中国に対する警戒感を鮮明にした。「中国の強引な振る舞いは国際秩序への挑戦だ」とし、「中国の影響力拡大と国際政策は、我々が同盟機構として対処する必要のある課題を突き付けうる」としてNATO加盟国は「NATOの安全保障上の利益を守ることを目的に中国と関与していく」と表明した。

 共同声明は中国をロシアと並ぶ脅威とし、急速な核兵器増強に加え、サイバー空間や宇宙での活動などを指摘した上で、「中国の野心的で強引な振る舞いはルールに基づく国際秩序と米欧の安保にとって体制上の挑戦」とし、「国際的な公約を守る」よう中国側に要請した。事務総長は中国に関してNATOは「共同で対応する必要がある」とした。

 G7もNATOも欧米主導であり、欧米主導の国際秩序を維持し、世界「標準」にするための有力な枠組みであり組織だ。揃って中国を脅威とする認識をあからさまに示したのは、欧米主導の国際秩序に対する中国の挑戦が効果を上げているためだ。欧米は中国との経済的な結びつきが強いため、封じ込めは欧米にもダメージを与えるので選択できず、中国に強いメッセージを送って「自重」を求めた。

 だが中国はG7もNATOも中国と同格と見なしているだろうし、中国主導の国際秩序の形成がおぼろげながら現実味を持ち始めたとあっては「自重」するはずもなく、強く反発するだけだ。基本的に、欧米主導の国際秩序は「力」によって形成されたものだから中国が同じことを試みるのは自然でもある。だが、欧米主導の国際秩序が崩れた時に国家間による「力による争い」が現れるとすると、これからの21世紀は大混乱が待っている。