望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

「集中」から「分散」へ

 東日本大震災震度5強だった東京では公共交通がマヒし、大量の帰宅困難者で混乱したが、建物などで大きな被害はなかった。政府の機能に支障は生じず、被災地支援の体制を徐々に構築することができた。しかし、東京が関東大震災のような直下型地震の被災地になった場合、政府が機能不全に陥る懸念がある。その時、日本全国の東京以外の地域は独自の判断で、どれだけ動くことができるだろうか。



 東京への一極集中の脆弱性が大震災以降、表立って指摘されるようになったが、一極集中は中央集権と同義であるためか、政治や行政は、東京への一極集中の是正に速やかに動こうとはしない。問題を先送りしているうちに、自然と問題が解消して行くなら幸運だが……幸運は滅多に訪れない。そして、いつか「その日」が来る。



 大地震などで東京にある政府が機能不全に陥った時には、おそらく大阪、名古屋などの大都市が支援の「音頭取り」を担うことになるのだろう。緊急の被災地(東京)支援体制としては妥当だろうが、東京(政府)の機能不全は長引こうから全国各地の地域も暫く自力で生き延びるしかない。東京への一極集中の脆弱性を是正しなかったツケを、全国で払うともいえる。



 他方では、東京の政府が主導する日本経済が停滞を続けている。失われた20年などとも言われるが、さらに日本の人口減少による今後の経済停滞が懸念されている。地方では、人口減少、高齢化による経済停滞が現実のものとなっていて、東京の政府による地方への再分配への依存は高まるばかり。今の東京頼みでは、地方の経済活性化は難しいだろう。



 東京への一極集中を是正することは、多重構造の「折れにくい」日本を構築することでもある。東京(政府)が、進んで一極集中是正に動かず、簡単には権限を手放さないだろう現状では、地方が「without 東京」でも生き延びるためには、自力で活路を見いだすしかない。「指示待ち」意識から抜け出た地方だけが生き延びるのかもしれない。



 東京への一極集中の是正は進まないだろうが、地方経済の活性化は地方が担うことができる。いや、地方が自力で動くことでしか、地方経済の活性化はできない。中央政府からすれば、特定の地方の経済だけを活性化させる施策はできまいから。



 「集中」から「分散」へ……首都圏の経済だけが活性化する状況から、日本各地に活性化した経済が存在する状況になれば、大地震などに強い日本列島になり、「打たれ強い」日本、「ねばり腰」の日本経済にもなろう。東京には多くを頼ることはできないと見極め、地方がどれだけ自力で活性化できるか、「東京なし」でも、やって行ける経済を地方が築くことが、東京を襲う大地震への備えにもなる。