望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





ビジネスチャンス


 一般人の困った人の中には、何かモメると「オレは○×組の×○を知ってるんだぞ」などと言い始めるヤツがいる。虎の威を借るネズミの類いだが、こんな台詞をタレントが日常で言うことはできない。脅すつもりで言ったつもりが、逆に相手に弱みを握られることにもなりかねない。



 互いに利用し合ってきた長い歴史があるだけに、芸能界と暴力団の関係清算は簡単にはいかないが、暴力団は排除するという社会の建前がある以上は、芸能界・タレントは「身ぎれい」を装わなくてはならなくなった。だからといって、タレントが揉め事に巻き込まれなくなったわけではない。

 バクチもやらず女にも手を出さず品行方正・安全第一で生活し、テレビなどでも無難なことだけを言い、いつも微笑んでいるだけのタレントが人気者になることは難しい。一般人とは異なる才を見せてこそタレントは人気者となり、露出が多くなって、いきおい揉め事のタネにも事欠かないこともあろう。



 暴力団関係者との交友が知られて引退し、一般人になったというタレントは、芸能界・タレントと暴力団との微妙な位置関係を知り、「適切」な距離の取り方が必要だということを痛感しただろう。引退後の身の振り方について、今回の経験を生かさないテはない。



 世に盗人の種がつきないように、芸能界にも表沙汰にできないトラブルの種はつきまじ……「需要」は確実に存在するのだから、ビジネスチャンスだ。引退したタレントはその芸能界での広い人脈を生かし、トラブル処理を引き受けるのだ。警察には目を付けられるだろうから、弁護士を雇って法律事務所を設立し、法に抵触しないように細心の注意を払う。



 表立って処理できない芸能人のトラブル案件は、引退したタレントが窓口となり、何人もの一般人を経由して暴力団関係者に話をつなぐ。引退したタレントはもちろん、処理を依頼した芸能人も暴力団関係者と直接接触しないので、「セーフ」だ。マスコミが嗅ぎ付けたなら、そこは法律事務所なのだから、あらゆる法的手段を講じる。タレント引退でもう一般人なのだろうから、マスコミにも遠慮はいらない。設立する法律事務所に、大物の警察OBを入れておけば鉄壁だな。