望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

感染拡大が続く都市

 日本における新型コロナウイルスの感染者は8万4千人台(10月1日現在、以下同)に乗り、中国本土の8万5千人台に近づいている。5月に中国政府は国内では感染拡大を押さえ込んだとし、その後に発表される感染者数は微増にとどまり、中国の公式発表の信憑性は低いとはいえ、中国国内から感染拡大の騒ぎは伝わってこないので、大幅な感染拡大は起きてはいないのだろう。

 日本国内で最も感染者数が多いのは東京都の2万5973人で、日本全体の30.8%。1日あたりの新規感染者が200人を下回ると、それが強調されたニュースになるなど東京都での毎日の感染者増加はもはや当然視されている気配だ。感染拡大に抵抗できないのか、感染の封じ込めを放棄したのか定かではないが、感染者増加と共存する状況になっている。

 東京に続くのは大阪の1万729人、神奈川6976人で、この3地域で日本全体の51.7%と半分を上回り、大都市での感染拡大が顕著だとわかる。さらに続く愛知5396人、福岡5044人、埼玉4700人、千葉3939人、兵庫2747人を加えると77.6%となり、日本全体の4分の3。人々が密になる都市環境と感染拡大に強い関連性があると見えてくる。

 感染拡大が始まった頃、「3蜜(密閉、密集、密接)を避けよう」とのキャンペーンが熱心に行われたが、経済・社会活動が再開した都市で3蜜を避けるには限界がある。人々が各地から集まって生活し、ビルが立ち並んで企業や商業施設が蝟集する都会の環境で、密集や密接を避けるのは簡単ではない。人々が密接になることで得ることができる楽しみの存在も都会の魅力だろうから、3蜜を避ける都会での生活は味気ないものだろう。

 兵庫2747人に続くのは沖縄2521人、北海道2126人、京都1771人で、この11都道府県で日本全体の85.2%を占める。京都の次は石川777人、群馬706人などと残りの県は1千人未満。沖縄、北海道、京都は人気の観光地でもあるだけに、国内移動の自粛が緩み、観光業支援のための観光奨励策も加わり、観光目的で都市から各地に出かける人々が増えるにつれて感染拡大が懸念される。無症状の感染者も観光旅行に出かけるだろう。

 感染者が最も少ないのは岩手の23人で、100人未満の県は鳥取36人、青森36人、秋田53人、山形78人、香川94人だけ。東北地方で感染者が少ない(仙台市がある宮城は413人、首都圏に近い福島は253人)。東北などと感染増加が続く東京都との比較検証を細かく行うと、感染拡大を抑止する条件が見えてくるかもしれない。

 首都圏1都3県合計の感染者数は4万1588人で日本全体の49.2%と半分を占め、関西2府1県は1万5247人で18.1%とほぼ2割。愛知5396人を加えると合計6万2231人で73.7%。人々が密集して暮らす都市より、人口密度が低い地方のほうが安心だと引っ越すことができる人は多くはない。感染したならしょうがないと「運」に任せて生きるのが、都市に住み続けるしかない人々の実情か。