望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

群発地震とマグマ

  群発地震は日本でも過去にしばしば起きている。地下におけるマグマの動きが原因とされ、近隣火山の噴火の前に起きることもあるが、一群の地震が続いただけで終息することもある。火山性微動と異なるとされる群発地震は、震源は火山から離れており、震源は浅い。小さな地震が多発することが多いが、M5、6クラスの地震が起きることもある。

 『理科年表』によると、古代や中世、近世の地震の記録では「地震うこと3日」「余震が20日間止まらなかった」「5〜6日震動が止まらず」「余震が多かった」「余震多数」「余震が70余日続く」「2日間で地震760回余、ひと月で1400回余」などの記録があり、余震が数カ月続いたとの記録も珍しくはないが、どれが群発地震なのか判別することは難しい。だが、ある地域で地震が続くことは珍しい現象ではないことが分かる。

 明治以降では、▽1903年乗鞍岳西方で余震多し▽1905年=大島近海で2日間で200回以上の地震▽1930年=伊豆北部で群発地震▽1965年=松代群発地震で被害を伴った地震51回、5年間で有感地震62821回▽2000年=三宅島の噴火に伴う群発地震などが挙げられているが、ほかにも、▽1975年=霧島山周辺▽1978年=伊東沖▽1978年=函館周辺▽1992年=西表島周辺▽1998年=飛騨地方などが群発地震とされる。

 地下深くのマグマから圧力や熱など何らかの力が地殻に伝わって来て、地中の断層などが刺激されて発生するのが群発地震で、マグマが上昇して来た時に火山周辺で発生するのが火山性微動と考えるなら、両者は異なるものだ。だが、両者はマグマの動きの影響が地表に表れたものということでは共通する。

 地殻内にマグマが上昇して来て滞留、蓄積した個所をマグマ溜まりと呼び、そこからマグマが地表に出てくると噴火になる。火山の地下にはマグマ溜まりがあるのだが、その更に下部に、部分溶解したマントルが上部マントル上層部に滞留しているとすると、部分溶解したマントルから枝分かれして上昇したマグマが各地に火山をつくるとも考えられる。

 部分溶解したマントルの大きさは分からないが、人間の感覚からすると広大なものかもしれない。例えば、別府から阿蘇山普賢岳にかけての地下一帯にあるとすれば、九州中部で地震が続いていることは、地下深くの部分溶解したマントルの活動が活発化している影響だとみることもできる。地中の構造や変化がはっきり分からないので、想像でしかないが。

 数年前の熊本地震は内陸部の活断層で発生した直下型地震とされていて、東方や南方から海洋プレートに押されて歪みがたまって起きたのだろう。だが、気象庁が「震源が広域に広がる過去に例がない形で、今後の予測は難しい」と言い、群発地震が続いていることから、何か別の力も作用していると考えるしかない。別の力が何かは今のところ、想像するしかない。