望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

火災が少なかった

 1923年の関東大震災では木造住宅など21万棟以上が全焼し、火災による死者・行方不明が9万人以上にもなった。1995年の阪神大震災では神戸市長田区などで延焼被害が大きく、7千棟近くが焼失し、500人以上が焼死した。住宅の耐火性能は上がっているのだろうが、強い地震の直後に、密集した住宅地で火災が発生すると被害は大きくなる。

 数年前の熊本地震阪神大震災と同じように、活断層が突然動いたという内陸型の直下型地震だ。震源は浅く、地面は激しく震動し、家々も激しく揺さぶられた。しかし、火災の被害は、報じられている限りではほとんど見られない。住人によると益城町でいくつかの出火はあったが、燃え広がらず、地域消防団により消し止められたという。

 熊本地震では、1階がつぶれるなど木造住宅の倒壊状況は阪神大震災と似ており、阪神大震災と同様の震動に襲われたものと見られるが、火災による被害には大きな違いがある。阪神大震災では断水で大半の消火栓が使えなかったというが、今回は消防署や地域消防団が迅速に消火対応できたのかもしれない。

 熊本には大きな地震が少ないと地元では見られていて、住宅の耐震性などに留意する人は少なかったと報じられている。神戸でも古い木造住宅が多く、住宅の耐震性や防火性にはあまり配慮されていなかったという。そして直下型地震の直撃を受け、多くの木造住宅が倒壊し、延焼に巻き込まれた。熊本でも多くの木造住宅が倒壊した。

 熊本で地震の被害が集中していたのは大都市ほどの密集した住宅地ではなかったので、出火があっても発見しやすく、消火活動を迅速に行うことができたのだとすれば、今後の地震直後の火災対策では、都市型と郊外型に大別する必要があろう。

 大都市では直下型地震の直後には、道路に自動車があふれて身動きができなくなったり、道路が損傷したり、信号機などの設備が損壊したり、家屋、ビルなどが道路上に倒壊して通行できなくなることが懸念されている。通ることができる道が見つからず消防車が現場に行き着けなければ、延焼をくい止めることは困難だろう。

 大都市でも郊外でも地震後の火災対策では、1)消防車などの通行路の確保、2)消火水源の確保、が必須だが、大都市では1)に重点をおいて都市計画から配慮し、地震直後でも消防車が動くことができるようにしておかなければ、阪神大震災のような火災被害を防ぐことは難しいだろう。