望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

地殻は跳ね上がるか

 数年前に、九州中部の地下に北東から南西にかけて潜む断層が連続して動き、震度7が連続して発生した熊本地震震源の深さは11km、12kmでマグニチュードは6.5と7.3だった。東北から北関東にかけての太平洋沖で発生した東日本大震災は、震源の深さ24キロで南北約500km、東西約200kmが動き、マグニチュード9.0と観測史上で最大規模の地震だった。

 熊本地震直下型地震で、地中の活断層が動いたとされ、東日本大震災は、プレート境界域で発生した海溝型地震とされる。どちらも地中で歪みがたまって発生したとされ、プレートの動きが関係している。大雑把にいうと、動いている二つ以上のプレートがぶつかった個所で溜った歪みにより発生するのが後者で、プレートの内部で溜った歪みにより活断層が動くのが前者。

 プレート境界域の海溝型地震の発生メカニズムは、東日本大震災後のテレビ番組でパネルなどを使って盛んに解説された。曰く、太平洋プレートが東北地方などが乗っている北アメリカプレートの下に沈み込み、太平洋プレートに引きずられて変形、歪みを溜めていた北アメリカプレートの端が跳ね上がり、一気に歪みを解放したという図式だった。

 北アメリカプレートの端がピョンと跳ね上がったことで地震が起き、その跳ね上がりが海水を持ち上げて津波になったという説明は直感的に理解しやすく、大まかに言えば、その通りなのだろう。だが、プレートの端が一体のものとして跳ね上がることが実際に起きたのだろうか。

 地殻の厚さは平均で海洋部分は10km以下、大陸部分で30〜60km程度。その地殻が地球全体では大きく分けて十数枚のプレートに分かれて、それぞれに動き、ぶつかりあって地震を起こしているとされる。地殻は岩石でできており、プレートも岩石の集まりだ。さらに地中の岩石には強い圧力が加わっている。プレートの端にある岩石が、TV番組の解説のように本当にピョンと跳ね上がったのだろうか。

 地球全体をみた時にはプレートは一体のものとして動くとしたほうが考えやすいのだろうが、プレート境界で実際に起きているのは、端がピョンと跳ね上がる現象ではなく、蓄積した歪みの圧力を軽減するため岩石が一気に破壊される現象だろう。圧力に耐えきれなくなった岩石は上方へ押されたり下方に押されたり左右に押されたり複雑に動きながら破壊される。

 プレート内の直下型地震は、地中の断層が動くことによって引き起こされるが、断層が動いた時には周辺の岩石では複雑な破壊が進行しているだろう。深さ10kmとは、10km分の岩石の重みが加わっている場所でもある。そんな場所で断層を動かし、時には上方へ岩石をずらすのだから、歪みとして蓄積されるエネルギー量は巨大だ。