望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

何が事実か

 中国政府は2月11日、新型コロナウイルスによる死者が前日10日に108人増えて1016人になったと発表、武漢市で中国最初の死者が出たとの発表は1月11日だったので、1カ月で1000人を超えた。このウイルスが急速に致死率を高めたと見えるが、発表数字がコントロールされているとの疑念も払拭できない。

 中央政府であれ地方政府であれ、発表されるデータに対する疑念がつきまとうのが中国。こうした疑念があると、例え実態を正確に反映するデータが発表されたとしても、どれが正確で、どれが修正され粉飾されているのか見分けがつかない。だから、すべての発表数字を眉に唾をつけて見ることになる。

 中国は国内で情報統制を厳しく行っているが、中国の内部情報を外部(世界)に対して完全には遮断できず、真偽定かではないが、様々な情報が世界のインターネットに溢れる。それらは、新型コロナウイルスによる死者数は中国発表の数字より遥かに多いとするようだ。

 例えば、▽武漢に建設した火神山病院では毎日200~400人が軍部により運び出され、新しい患者が直ちに入室する。遺体は軍の車が運び出す(火神山病院は中国軍が管轄し、軍医が対応)。▽武漢市の火葬場が24時間稼働しており、自宅から運ばれる遺体が多く、死亡証明書の死因は「新型肺炎の疑い」が多い(発表される死者数は、感染を確定した患者の死亡者数。感染疑いのままで死亡した人を含まない)。

 欧米などのメディアが武漢市に入って自由に取材できれば、より正確な実態が判明するだろうが、中国政府の発表より実態が遥かに深刻だと判明すれば、中国のメンツは丸潰れになるとともに、人々の政府に対する信頼は急速に低下するだろう。それは中国共産党の1党独裁を揺るがす。

 何が事実か。新型コロナウイルスの感染が拡大して以来、中国政府や湖北省などが死者数や感染者数などを毎日発表し続けている。その数字に基づいてWHOや各国の医療関係者らが新型コロナウイルスの感染性などを議論しているが、それらの数字が実態とはかけ離れていたとしたなら、そうした議論に科学的な客観性は皆無となる。

 武漢市は人の移動を最大限減らすため全ての住宅地を「封鎖管理」し、北京市上海市は市民の移動規制を実施。北京、上海、天津、重慶の4直轄市と他の80都市で都市封鎖または外出・移動規制が実行されている。2月11日発表の感染者は10日だけで2478人増え、4万2638人とされる。強権で人々の移動を禁止しなければならないほど感染の実態は深刻であると、中央政府も地方政府も認識してらしい。