望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

地位と名誉と好色漢

 英王位継承順8位のアンドリュー王子は、一時的に公務から引退すると表明せざるを得ない状況に追い込まれた。一時的とするが、アンドリュー王子に対する批判は収まらず、英エリザベス女王がアンドリュー王子の「解任」を決め、約25万ポンド(約3500万円)の年間報酬を撤回したとの報道もあり、奔放な女性関係が喧伝されたアンドリュー王子の前途は厳しい。

 BBCのインタビューに応じたアンドリュー王子は、米富豪ジェフリー・エプスタインと親交があったことやエプスタイン宅に滞在したことは認めたものの、未成年女性と性行為を行ったとの疑惑については、会った記憶がないと否定し、エプスタインの私有地の島で複数の若い女性と性交したことなども否定した。

 米富豪エプスタインは08年、司法取引に応じて未成年者買春の罪を認め、禁錮1年半の有罪判決を受けた。19年7月には、未成年者の性的人身取引容疑で再逮捕され、拘置所内で首吊り自殺した。訴状によると、エプスタインはニューヨーク市マンハッタンとフロリダ州の邸宅に未成年を引き入れ、性行為の対象にしていたという。エプスタインは政治家、有力者、著名人らと人脈が幅広く、自殺を装った口封じの他殺との憶測も流れた。

 アンドリュー王子もエプスタインも未成年者を性行為の対象にしていたことが問題視されているのだが、成熟した裸の女性に囲まれる「ブンガブンガ」と呼ばれる乱行パーティーを開催していたのが伊ベルルスコーニ首相。女性たちは首相を「その気」にさせようと競い合っていると伊メディアが報じ、未成年女性が参加していたことがあったと起訴された。

 アンドリュー王子はエリザベス女王の次男(第三子。長男が王位継承順1位のチャールズ皇太子)。エプスタインと初めて会ったのは1999年と話し、エプスタインが未成年を売春に勧誘・斡旋した罪で有罪を認めた後も交友を続け、当時から批判されていた。交友を続けたのは国際ビジネスについて知りたかったからだとアンドリュー王子は説明している。

 エプスタインはヘッジファンドを経営して財を築き、遺言書にあった財産は約5億8000万ドルだったという。エプスタインは邸宅などに招き入れた未成年女性との性行為で報酬を支払っていて、勧誘先は米国内にとどまらず欧州や南米にも及んでいたとされる。金銭が伴っているのだから国際ビジネスであったのは間違いないが、アンドリュー王子が学びたかった国際ビジネスだったかどうかは不明だ。

 アンドリュー王子が運営する事業から出資企業の撤退が相次ぎ、大学学長などの名誉職にも批判が高まっていて、社会の表舞台から引退を余儀なくされるのは避けがたいように見える。自らの不行状の報いではあるのだが、王位継承権を喪失したならアンドリュー氏は、ただの好色漢に過ぎない。それも一つの人生ではあるが、地位と名誉を失っても手にするほどの価値ある立場だったのか。