望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

変わるCピラー

 自動車のデザインには世界的な流行がある。20世紀半ばのアメリカ車がデザインでも世界的な影響力を持っていた頃には、テールフィンやコークボトルラインなどが各国のメーカーのデザインに影響を与えた。

 その頃、欧州ではイタリアのカロッツェリア(デザインや少量生産を行う会社)が新しいデザインを競って発表する一方、日本を含め各国の自動車会社と契約して新車のデザイン開発を行うなど影響力を持っていた。

 オイルショックにより燃費が重視されるようになって大型のアメリカ車が競争力を失い、小型車シフトが進むと、欧州車や日本車の存在感が高まった。並行して各社のデザイン部門の強化が進み、どこかの国やメーカーがデザイン面で世界的な影響力を持つことはなくなり、相互に影響し合うようになった。

 21世紀に入ってからは、丸や四角だったヘッドライトがボディラインに合わせて様々な形にデザインされるようになり、抑揚が強調されたボディラインが増え、機能に関係ない装飾目的のラインや面をボディに加えたり、フェンダーを盛り上げることなどが世界で流行っている。

 最新の流行は、Cピラーに変化を加えることだ。3ボックスのセダンが減り、車高が高く車室と荷室が一体化したSUVが世界的に主流になりつつあるが、セダンでもSUVでもCピラーはボディと同色に扱われていた(SUVではDピラー)。そんなCピラーが、個性を出すための重要なアイテムになった。

 Cピラー全体を黒くしてガラスで覆うデザインは以前にもあったが、流行り始めているのは、Cピラーの一部だけを黒くするデザインだ。これで、後方に向かって下がるルーフラインと、後方に向かって上がるウエストライン(ベルトライン)を強調して見せたりする。

 このデザインはトヨタや日産など日本社が積極的に採用しているが、欧米のメーカーからもCピラーに同様のデザインをした新車が発表されている。セダンでもSUVでもシルエットでは各社の車に大きな違いは乏しいので、細部で個性を出すために各社がCピラーをいじり始めた様相だ。

 デザイナーにとってCピラーを自由にデザインすることは新しい試みだろうから、様々なCピラーのデザインを世界でこれから見ることができるかもしれない。ただ新車の開発には時間がかかるので、様々なCピラーのデザインの車が世界の路上に溢れる頃には、この流行が飽きられて、目新しさは急速に失せているかも。