望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

被害者とカモ

 SNSの投資話につられて、高齢者が数百万円から1千万円以上などの大金を奪われたとのニュースを見聞きすることが多い。警察などが注意を呼びかけているが、同様のニュースは一向に減らない。投資詐欺に関する相談件数は2023年に8398件(うち7157件が被害後の相談)で、相談者は60代以上が約39%、40代以下が約36%と高齢者が多い。10年前は2060件だったので4倍以上に増加した(金融庁)。

 高齢者は投資詐欺に狙われているとの自覚を持って警戒するべきだが、相手は「プロ」の詐欺集団だ。手口は巧妙で日々変化しているが、最初の投資で儲けさせ、徐々に投資金額を上げさせる手法が多いようだ。投資詐欺の手口は、「未公開株・新規公開株」関連、「外国通貨や暗号通貨」関連、「権利」関連(風力発電太陽光発電、新技術などに関係する権利や知的財産権などへの投資)などがあり、複数の会社を装った複数の人間が1人の消費者を騙しにかかる「劇場型」の手口や「プロ向けファンド」を装う手口もある(金融庁)。

 投資詐欺を見破るポイントは、▽聞いたことのない(金融庁への登録も確認できない)業者からの勧誘▽「上場確実」「必ず儲かります」「元本は保証」「後から買い取ります」などの言葉▽未公開株や私募債の取引の勧誘▽同じ株式・社債などを複数の業者が勧誘▽公的機関の委託などを装う勧誘▽公的機関を連想させる名称を使っている勧誘-などだ(金融庁)。SNSで親しくなってから投資話に引き込む例も多いとされ、詐欺業者は警戒心を弱めるテクニックを磨いている。

 こうしたニュースでは、騙されて大金を奪われた人々は詐欺の被害者とされる。大金を奪われた人々は、おそらく生活費ではなく、溜め込んだ資金を増やすことができると欲に駆られて投資話に乗ったのだろう。投資は自己責任であるが、儲け話の詐欺に騙されて大金を奪われるのも自己責任だ。何度も送金している事例が多いのは、すっかり騙されていたことを示すとともに、いかに欲に駆られていたかをも示している。

 欲につられて、まんまと大金を騙し取られた人々は、同情すべき対象か、冷ややかにカモだと見ておけばいい対象か。生活費を巻き上げられた人なら同情の対象になるだろうが、生活に余裕のない人が数百万円も投資できるものだろうか。詐欺の被害者であっても、欲に駆られて溜め込んだ資金を投じた人に対しては自己責任をもっと問うべきではないか。

 投資詐欺に引っかかって溜め込んだ資金を奪われた人々に対して、間抜けなカモだと笑ってす済ます社会なら、「騙されるほうにも責任がある」ことが常識となる。そうした社会では、人々の警戒心は高まるだろう。警察などがしきりに投資詐欺に対する注意を呼びかけても、騙される人が次々と現れる日本社会は人々の警戒心がゆるく、詐欺師集団にとって魅力的な「市場」だろう。

 詐欺話に乗って大金を取られた人々を批判的に扱うことは大衆相手の商売である報道機関にはできず、被害者として扱う。報道機関は同情心を煽ることを好むから、騙された人々の責任を問うことはしない。そうして、いつまで経っても騙される人々が減らず、警察などが注意を呼びかけることが続く。金を溜め込んだ人々は欲深で、おいしい儲け話に弱いとすると、投資詐欺はなくならない。