望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

記憶か記録か

 WHOによると世界の新型コロナウイルスの累計感染者数は7億6366万5202人、累計死者数は691万2080人だ(2023年4月16日時点)。地域別に見ると(累計感染者数・累計死者数の順)、欧州は2億7554万人・222万人、南北アメリカは1億9199万人・294万人、西太平洋は2億233万人・40万人、南東アジアは6092万人・80万人、東地中海は2333万人・35万人、アフリカは952万人・17万人。

 日本の累計感染者数は3380万3572人、累計死者数は7万4694人だ(2023年5月9日時点。全数把握による感染者数の発表は2023年5月8日が最後。米ジョンズ・ホプキンス大は2023年3月10日にデータの更新を終了)。日本を含め世界で大惨事をもたらした新型コロナウイルスだが、発生源は不明だ。中国武漢市の卸売市場から広がったとか武漢ウイルス研究所から流出したとか推測されている。

 25年6月に公表した報告書でWHOは、必要な情報・データの不足で「結論は出ていない」とした。その上でコウモリなどの動物から人への感染が「最も裏付けのある仮説」とし、武漢市の研究所からのウイルス流出説について信憑性を「評価できない」と判断を保留した。米下院特別小委員会は24年12月に公表した報告書で、武漢の研究所での事故がパンデミックを引き起こしたウイルスの起源だとした。

 都合が悪いデータは隠す中国が、WHOが必要とする情報・データを提供する可能性は低く、新型コロナウイルスの起源は不明のままに終わりそうだ。7.6億人以上が感染し、約700万人が死亡したパンデミックの記憶を世界の人々は語り継ぐだろうが、起源や発生源が隠されたままでは正確な記録を作成することはできない。次のパンデミックに備えるためには記憶よりも正確な記録が必要だ

 新型コロナウイルスは感染拡大を繰り返した。日本では2020年4月頃に感染拡大の第1波があり、23年2月頃に第8波があって同年5月に5類移行となったが、その後も感染拡大はあり、2024年8月頃の感染拡大は第11波だと厚労省。これまでの感染拡大は冬と夏に繰り返していたが、変異株の出現・人流の増加・接触機会の増加など様々な仮説はあるものの、感染拡大を促した要因は特定されていない。

 同様に感染拡大が収束した要因もはっきりしていない。ワクチン接種と自然感染による免疫獲得・警戒心が高まり接触機会が減少(自粛の効果?)・長期休暇や連休の終了などが指摘されるが、それぞれの要因は「定性的には検討できるが、どの程度、収束に寄与したかという定量的な解を得ることは困難」(厚労省)。

 感染が拡大し、収束しては感染が拡大することを繰り返した新型コロナウイルス。何回も感染拡大の波があったとの記憶よりも、何が感染拡大を促し、何が収束させたのかを突き止めて記録に残すことが必要で、ワクチンや自粛要請などにどれだけの効果があったのかを明らかにすることが「次のパンデミック」対策に役立つ。感染拡大と収束の要因を曖昧なまま放置することは、今後の対策も情緒に流される可能性を残す。