1枚2万円のパーティー券を企業や団体、個人に大量に買わせて、主催した政党の派閥や政治家が多額の政治資金を得るという仕組みは、企業や団体などからの政治献金規制を迂回するルートとして定着していた。この仕組みはパーティー券収入を主催者が収支報告書に正確に記載し、パーティー券収入の一部を環流された議員も収支報告書に正確に記載することで透明性が保たれる。
だが、各派閥のパーティー券収入から議員への還流が闇に隠され、裏金として使われていたことが明らかになった。大半の議員側がキックバックを受けていたという安倍派の収支報告書の不記載・虚偽記載罪の時効にかからない5年間(2018~22年)の総額は5億円規模とされ、岸田派でも収支報告書に記載していなかったパーティー券収入の金額は5年間で数千万円になると報じられた。
派閥は所属議員に当選回数や役職などによってパーティー券販売でノルマを課し、ノルマを上回ってパーティー券をさばいた議員に超過分をキックバックしていたが、派閥も議員側もキックバック分は収支報告書に記載せず、裏金となっていた。時効にかからない5年間の金額だけで億円単位になるのだから、パーティー券販売による過去の裏金の総額は百億円を超えるかもしれない。
派閥から所属議員にパーティー券のノルマを超過した金額が政策活動費の名目で流れたといわれる(政策活動費は政党から政治家個人への寄付という政治献金で、使途を公開する義務がない金だ)。報道によると、政策活動費は2021年までの20年間で主要政党で約456億円に上り、うち自民が約379億円だったという。さらに、ノルマ超過分は派閥に収めず、そのまま裏金にしていた議員もいるというからパーティー券をめぐる闇は深い。
裏金づくりの背景を「政治は金がかかる」と説明する声も漏れ伝わるが、正確には「選挙は金がかかる」だろう。国会議員には文書通信交通滞在費(1人当たり月額100万円。現在は調査研究広報滞在費に名称変更)、会派に対して立法事務費(1人当たり月額65万円)が支給されていて、使途は公開されずに自由に使うことができる。議員の政治活動をサポートするには十分すぎる金額だろう。議員の地元の後援会活動を維持することなどに金がかかっているのだ。
派閥や政治家の資金集めパーティーは盛大に行われ、マスメディアの政治部記者らは取材を兼ねて参会していただろうに、パーティー券収入を使った裏金づくりに気づかなかったか、気づいていても問題意識を持たずに報じてこなかった。時効にかからない5年間の金額だけで億円単位になる不正にマスメディアは鈍感だった。これは、日本のマスメディアの政治権力を監視する能力はかなり貧弱だということを示している。
日々の出来事を追うことはマスメディアの主要業務だが、速報性に有利なSNSなどの普及もあって、マスメディア各社の独自性を発揮できるのは調査報道しかない。政治家や派閥などの収支報告書の細かな検証を行う取り組みが各社でシステム化されていたなら、もっと早く裏金づくりが暴かれていたかもしれない。収支報告書がデジタルデータ化されればAIを活用して精査することは簡単になり、複数の収支報告書や決算書などを突き合わせることもAIがやってくれるようになる。