「日本の未来を守る〜日本社会と民主主義の持続可能性に向けて〜」の言葉を掲げて、多くの財界人や大学教授らが集まって発足した令和臨調(令和国民会議)は、「民主主義は政治家のみによって行われうるものではない。わが国の社会と民主主義の持続可能性を守るため、それぞれの立場や利害を乗り越えて、危機を乗り越えるために手を携えよう」と呼びかける。
その令和臨調が公表した「政治資金制度改革等に関する緊急提言」は、「政治資金制度の緊急改革」で9項目、「政党のガバナンスの改革」で10項目の具体的な提言から成る。前者では、パーティー券の売買を含む現金による政治資金の拠出・収受の禁止や収支報告書誤記載・虚偽記載に対する罰則強化、政党助成制度の点検と見直しなどを挙げた。
財界の危機感の一端が示されたともいえる令和臨調の提言は基本認識として、今回の疑惑は▽有力政党の有力政治家たちの関与が指摘され、事態はより深刻、▽予算を決め、税を扱い、法律をつくる立場にある政治家にその資格があるか問われている、▽改革の核心は政党ガバナンスの立て直しだ、▽「民主主義のコスト」 について政治の側と国民の側が共同作業として不断の改革を続けるべきーなどとしてる。
パーティー券を大量に買っていたであろう財界側も、政治献金が多くの政治家の裏金になっていたことには我慢ならなくなったと見え、提言の文章には静かな憤りの気配が各所に滲み出ている。世論やメディアの批判は時間が経てば勢いが弱まり、やがて沈静化すると期待しているだろう自民党は、金ヅルの財界側から具体的な改革を突きつけられ、その場しのぎの改革で済ますことは簡単ではなくなる?
提言の基本認識では「民主主義のコスト」として、政治に要するカネの存在を肯定し、そのコスト(カネ)を誰が、どのような形で負担すべきなのかを政治の側と国民の側とで率直な対話を開始しなければならないーとする。だが、「民主主義のコスト」には政党助成金に加え、企業団体からの献金が含まれることを前提に、政治資金などを監督する第三者機関の設置など現在の仕組みを厳しく修正すべきという立場にとどまる。
「政党のガバナンスの改革」では、「政党の必要性が自明視されなくなりつつある危機感を各政党・政治家は持つべき」で、求められているのは「派閥を必要としない党運営・政党ガバナンスの確立に向けた実質的な改革論議」であり、「政党のガバナンス改革を実効あらしめようとするならば、関連する様々な政治分野の改革を必要とする」とした。
政党に「内部統制の仕組みを確立した上で、ガラス張りの党運営を行うよう」求めるが、「国民の税金を原資とする政党助成金を受け取っているにもかかわらず、各党が必要な対応を行わないのであれば、政党政治の危機に対して政党の自律性に期待するのでは不十分である」とし、政党法の制定を示唆する。
これらの財界から具体的に示された政治資金や政党を巡る改革要求に自民党が、どう応えるのか定かではない。財界が本気で自民党に抜本的な改革を求めるなら、自民党に圧力をかけるしかない。まず自民党への政治資金の提供を令和臨調に名を連ねる企業群がストップし、改革の進み具合に応じて政治資金の提供を行うようにして改革を強制する。そこまで財界が踏み切ることができるか、言いっ放しの提言に終わるか、試されているのは政党とともに財界だ。