望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

タレントと才能

 大手芸能事務所に所属するタレントが、次々にヒット曲を放ち、やがてテレビでバラエティー番組の司会をこなしたり連続ドラマに出演したりと露出を増やして人気を得ていたとしても、どこまでが本人の才能なのか、どこまでが大手芸能事務所の演出やサポートによるものかは判別が難しい。

 大手芸能事務所を離れてから、そのタレントに本当に才能があるのかが見えてくる。曲作りの才能があり、歌うことが本当にやりたいことだったなら、そのタレントは音楽活動を続けていくだろう。だが、大手芸能事務所からあてがわれた曲を大手芸能事務所にあてがわれた舞台やテレビ局などで歌っていただけなら、大手芸能事務所から離れた途端に音楽活動を止めざるを得まい。

 過去のヒット曲を大手芸能事務所に取り上げられたとしても、そのタレントに音楽活動を独力で行う才能と意欲があるなら、自前で曲を用意して活動を続けていくだろう。資金力やスタッフなどの不足で大きな会場でのコンサートができなくても、小さなライブハウスは全国にある。また、演技者として才能があり、舞台に立ちたいのなら、大手芸能事務所のにらみが効かない小舞台などが活躍の場となるだろう。

 日本では、大手芸能事務所から離れたタレントの多くが、大手芸能事務所のにらみもあってテレビや雑誌などでの露出がなくなり、やがて目立たなくなっていく。ヒット曲を歌い、テレビドラマなどに出ていた過去があっても、歌手としても演技者としても評価が低いタレントは、大手芸能事務所の「あやつり人形」に過ぎないことが大手芸能事務所を離れると露呈し、タレントの人気は大手芸能事務所の演出やサポートに依存していたことが明らかになる。

 歌手や役者になることを目指した人なら大手芸能事務所から離れても活動を続けるだろうが、タレントになって人気と高収入を得ることが目的だった人は大手芸能事務所から離れると、できることは別の芸能事務所に入ることだけだ。そういうタレントにとって自己プロデュース能力とは、自分を盛り立ててくれる芸能事務所を見つけて所属することだ。

 人気と高収入を得ることが目的だったタレントは、露出し続けることが人気を維持するためには欠かせないと自覚し、音楽でも司会でもドラマでも、呼ばれれば何でもやる。呼ばれること=露出する場を用意するのが大手芸能事務所だけである場合、タレントは人気を得るために大手芸能事務所に従属するしかない。大手芸能事務所に従属して人気を得ていたタレントは、大手芸能事務所と離れたなら人気も失っていく。

 大手芸能事務所を離れてからタレントは、どんな才能があるのかを試される。人気や高収入が目的だったタレントの多くは、大手芸能事務所の演出やサポートがなくなれば、できることは何もなくなり、お呼びを待つだけの存在になる。やりたいことがあって芸能活動を行っていたタレントなら、大手芸能事務所と切れても自己プロデュース能力を発揮して、やりたいことをやるだろう。