望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

実需としての移住

 北海道では人口減少が続いている。2023年1月1日現在の道内の日本人数は514万8060人と24年連続で減少が続いた。国立社会保障・人口問題研究所は2045年には400万4973人になるとの推計を示し、道内179市町村のうち85市町村で人口が半分以下になるともした。観光客は増えても定住人口は減るのが北海道の現状だ。

 パンデミックによる旅客数減少もあってJR各社は利用客が少ない地方路線の維持を続けることができなくなりつつあり、赤字幅が大きい地方路線の廃線問題が現実味を増してきた。一方、北海道では以前からJR北海道は赤字路線を維持することができず、毎年のように各地で廃線が行われていた。

 地方路線の廃線には地元から強い反対の声が上がる。列車を定時運行して収入を得るという鉄道事業を続けるには乗車人数を増やし、黒字化を目指すしかないが、現実には利用人数は増えず、地方自治体や国からの資金的な支援に地元は頼るしかない。だが、その地方の鉄道事業の永続性を求めるなら、乗車人数を増やす努力が地元に求められる。

 乗車人数を増やすには、①沿線の住民を増やす、②観光路線化して来訪者を増やすーが必要だが、過疎化の進行に「無力」な地方には①は無理で、沿線に有力な観光資源がなければ②も無理だろう。列車を定時運行するという鉄道事業の存続には、沿線住民を増やし、通勤・通学などの利用者を増やすために地元は本気を出す必要がある。

 都道府県の魅力度ランキングでは北海道は13年連続1位だが、移住先としての人気はそう高くない。冬季の寒さや積雪などが嫌われ、年間を通しては「住みやすくない」と見られている気配だ。人口が減り続けている北海道では移住者を増やさなければ、この先も人口減少が続く。このままではJR北海道の路線は次々と廃線になるしかないと見える。

 北海道が人口減少による衰退を食い止めたいのなら、本気で定住人口を増やすことに取り組むしかない。すでに移住促進策は北海道も道内各自治体も行っているが、定住人口の減少が続いていて、顕著な効果をあげているとは言えない。自然豊かな北海道で暮らしたいとの願望と、実需としての移住は異なる。北海道への移住の需要が実際にどれほど存在するのかを調査して把握しなければ、本当に有効な移住促進策は出てこないだろう。

 定住人口を増やすには、人口が多いところから引っ張ってくるしかない。北海道は首都圏ー特に東京や神奈川、埼玉、千葉を対象に、北海道への移住の需要が実際にどれだけ存在するのかを調べ、1人でも多くの北海道への移住者を獲得する施策を早急に作成するべきだ。霞ヶ関や東京のコンサルに頼らず、独自の視点と施策で北海道への移住需要をつかむしかない。