望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

人を増やす

 え~、袖振り合うも多生の縁とか申しまして、この世で出会った人は大切にしなければいけませんな。パンデミックで日本に来る観光客はずいぶん減ったそうですが、東京などでは欧米系の人を見かけることは珍しくなく、アジア系の人も多いそうで、外国人密度は以前に比べて、めっぽう上がっていると思うのですよ。



 多生とは仏教用語で「生き物の宿命として、動物・人間・天人などとして何回も生まれ変わること」だそうでして。してみると、日本のどこかでスレ違う外国人とも、多生の縁があるのかもしれません。縁というものは大事にしなけりゃいけませんな。

 

 日本全体で人口減少が始まったようですがね、都会には人がいっぱい。でも地方に行くと、そうでもないようで。過疎化が進み、おまけに残っているのは高齢者ばかり……そんな地方が珍しくないとか。産業が衰退して人が減り、売上げが落ちて商店が減り、病院なども閉鎖されて暮らしにくくなり、さらに人が減る……そんに循環に陥ると、抜け出すのは容易ではないでしょうな。



 過疎化した地方を活性化するためには、特産物を作ってネット販売したり、温泉を掘ったり、イベントを仕掛けたり……、都会の人の気を引こうとする試みがいろいろ行われますな。地元では人が減り、消費も停滞しているので、都会の人々という「需要」をアテにしているんですな。でも、どれも本質的には一過性でしかありませんや。



 地方が元気になるためには、人を増やすこと、住み着く人々を増やすことですな。田舎暮らしブームだから団塊世代のリタイア組など都会からの移住者が増えるなどとアテにせず、人を増やす努力をすることです。縁は日本国内だけとは限りません。海外から日本の地方に来て、住みたいという人がいるかもしれません。それは難民であったり、移民であったりするかもしれませんが、それも縁という奴で。



 日本の人口が減るから期間限定の労働者を導入するという発想ではなく、日本の地方に入って生活し、納税し、健康保険に入り、年金制度にも加入し、国籍をとって、日本で家族を形成して生きていこうという人々を受け入れる……これが地方の過疎化対策の最強策かもしれませんな。



 例えば、北海道。アイヌの人々を除くと道民の大半は、せいぜい百数十年ほど前に日本各地から北海道に移民した人々の子孫でしてね。新規の移民に対する拒否感は少ないかもしれません。人が増えても製造業が少なければ就業機会が制限されるかもしれませんが、そこは農業や林業水産業の出番でして。地方にあって高齢化が進み後継者難の第1次産業こそ、海外からでも縁があれば人を受け入れ、活気を取り戻す手掛かりにするんですな。