望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

枕詞

 「ぬばたまの」と言えば夜、「たらちねの」と言えば母、「あおによし」と言えば奈良、「くさまくら」と言えば旅、「ちはやふる」と言えば神、「ひさかたの」と言えば光、「やくもたつ」と言えば出雲など枕詞というものがある。しかし、これらは昔に作られたもの。そこで、新しく枕詞を考えてみた。条件は、▽ある程度の時の流れに耐えられること、▽特定の言葉への喚起力を持っていること、▽品があること。

 「空に舞う」と言えば馬券、「いでにけり」と言えば終電、「たいくつな」と言えば人生、「騒げども」と言えば花見、「気取り飲む」と言えばワイン。あっ、ワインなら、麗しき「なお美飲む」のほうがいいか。

 「夜を照らし」と言えばネオン、「髪切って」と言えば失恋、「賭けて見る」と言えば高校野球、「隠れて食う」と言えば官僚、「馬を持つ」と言えば外務官僚、「居所なく」と言えば連休。連休は「渋滞の」もいい。

 「いつも見る」と言えばケータイ、「すぐキレル」といえばチーマー、「心の闇」と言えば17歳、「マグロ寝る」と言えば援助交際、「白卵」と言えば水道橋、「列をなす」と言えば尾瀬、「飛び込みの」と言えば中央線か。

 「居にけれど」と言えば政治家、「奇跡待つ」と言えば宝クジ、「リスが鳴く」と言えば鎌倉、「金無くす」と言えば新興宗教。これは「金注ぎ」とか「すがりつく」などでもいいか。

 「垢すりの」と言えばソウル、「迷走す」と言えば台風、「鳩も喰う」と言えばカラス、「来にけらし」と言えば痴呆、「微力寄せ」と言えばボランティア、「逃げ場なき」と言えば地震、「やりしかど」と言えば妊娠。これは「覚えある」とか「一度でも」「はめられし」などもありそう。

 「いつもなき」と言えば金、「いつもあり」と言えば不満、か。「ふと見れば」と言えば古女房、「つい信じ」と言えば天気予報、「朱に染まり」と言えば人間、「下手なれど」と言えばカラオケ。