望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

給付金か食事代か

 消費を刺激するため日本政府は2009年に定額給付金(1人1万2000円)を支給した。その支給の前年にこんなコラムを書いていました。


下げ潮「何を買おうかしら? ブーツもいいし、マフラーも新しいのがそろそろ欲しかったんだ。臨時のお金なんだから、美味しいものを食べに行くのもいいね。もたもたしてないで、早く配って欲しい。クリスマス前には欲しいわ」



朝汐 「でもさ、2、3年先に消費税を増税するって言ってんだから、べつに得するわけでもないじゃん。皆さんに支給した分は後から回収しますよって筋書きになってんだから、自分の財布から金を出して使ってるのと同じじゃん」



下げ潮「びくびくすることないわ。2、3年先なんて、世の中がどうなってるんだか分からないでしょう。首相だって何人代わってるかしら。景気が良くなってれば増税の話も出るかもしれないけど、不景気が続いてれば、参院選挙もあるでしょうし、増税を持ち出せる政治家、政党があるかしら」



朝汐 「不景気が続いてたって、日本の財政の赤字が膨らみ過ぎると増税せざるを得ないじゃん。支出を減らすため行政機構を見直して官僚を4割減らします……なんてことを政府がやるはずないから増税しかないじゃん。不景気と需要縮小によるデフレが続くんだから、現金はしっかり持っておくこと。ここで1万2千円があればなんて2、3年先に思うのは、いやじゃん」



下げ潮「先のことは、その時に考えればいいわ。貧乏になったんだったら、その時は慎ましく暮らすしかないからね。だから、パアッとできるときに、やっておくの。そうだ、新聞の首相動静欄に載ってる高級そうな店で食事するってのもいいわね。でも1万2千円で足りるかしら」



朝汐 「ワイン代だけで、それくらい行きそうじゃん。4人世帯の6万4千円ぐらいあれば、夫婦で食事できるかもな。1万2千円なら、ホテルのバーがせいぜいかも」



下げ潮「なんだかパアッという気持ちがしぼんでくるわね。1万や2万の金のことで、わあわあ騒いでいる人たちを見て、首相みたいなお金持ちの人は冷ややかに見てるんでしょうね」



朝汐 「そんな金、いらねえよって思うんだけど、後から増税で回収されるんだったら、自分の金と同じだから、受け取っておかないと損するじゃん。貯金しとくか金製品を買っとくんだな」



下げ潮「なんだか気に障るお金ね。さっさと配って、さっさと使ってしまうのがいいのに、いつ配るのかしら。そうだ、年末のジャンボ宝くじ買おうっと。1万2千円あれば40枚か。それくらい買えば百万円くらい当たるかもしれない」



朝汐 「でも、どうやら配るのは早くても来年3月以降になりそうな気配だから年末ジャンボには間に合わないよ。それにさ、宝くじなんて外れるに決まってるじゃん。そんなものに使うなら、食事に使ったほうがまだましじゃん」



下げ潮「よし、決まった。ホテルのバーに行って葉巻を吸うわよ」