望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

コイズミプス王

 こんなコラムを2004年に書いていました。

 丘に陣取ったスフィンクスが問いかける謎を解いたコイズミプス、旅の途中だったが、人々から請われて王の座についた。コイズミプスが王になってから景気が持ち直し、人々からの人気も高かったものの、やがて猛暑が続いて干ばつとなり、地方によっては集中豪雨に見舞われ、ジコウレンリツという正体不明の疫病がはびこり、人々の心も「この国は呪われている」とコイズミプス王から次第に離れるようになった。

 それを憂えたコイズミプス王は、神官に神のお告げを請うた。神官は「先代の亡きジミン王の無念がこの国を覆っている」と告げた。

 コイズミプス王は「先代のジミン王の死の真相を知っている者は申し出よ」と人々に呼び掛けたが、応じる者は誰もいなかった。知っている者がいるはずだとコイズミプス王が調べさせると、引退した元金庫番の老人がジミン王が旅先で死んだ時に同行していたことが判り、早速その老人を召し出した。

 「知っていること全てを話せ」とコイズミプス王は命じたが、老人はコイズミプス王を見て怯えて話すことができない。「何を話しても罰しはしない」とコイズミプス王はようやくなだめ、老人はやっと、ジミン王が旅先で、道を譲らぬ見知らぬ若者を押し退けようとした時に逆に押し返され、転んだジミン王は打ちどころが悪く、そのまま死んだと述べた。コイズミプス王は「なんといたましい御最期!」と叫び、老人を帰そうとしたが、老人は「あなたが、その若者だ」と叫んだ。

 コイズミプス王は「何を言うか。ジミン王をぶっ壊すと言ったことはあるが、殺してはいない」と怒り始めたが、SPに抱きかかえられて退室する老人は「間違いない。ジミン王を殺したのは、お前だ」と繰り返した。

 コイズミプス王は「変なことを言う人がいるものだ」とつぶやき、騒ぎを聞いて部屋から出て来たイオザイカイ妃に「ジミン王の死について、おかしな噂が流れている。構造改革をして規制強化をしなければならん」と言った。イオザイカイ妃は「御心をつまらぬことで、お悩ましなされるな」と慰めながらも噂の内容が気に掛かるようで、老人の言った話を聞くと急に青ざめ、「ワシを殺した者がおまえを娶る」とジミン王が言ったことのあるのを思い出した。不安になりイオザイカイ妃はコイズミプス王に、老人の言ったようなことが実際にあったのかを尋ねると、「若い頃の話で、よく覚えていない」と言う。

 そこへ神官が現れ、神の新たな託宣として、ジミン王の捨てられた子であるコイズミプス王が父を殺し、母を娶っていることが全ての元凶だと告げた。

 コイズミプス王は「人生いろいろ。いつまでも気にすることはない」と言い、イオザイカイ妃も「できてしまったものは、しょうがないじゃないの」ととりあわず、「現代の我々の神はアメリカだから、あっちから何も言って来なければOK」とコイズミプス王は微笑んだ。