こんなコラムを2007年に書いていました。
鬼平 「鹿児島県議選の買収事件、あれには呆れた。事件を解決するはずの警察が、事件を作り上げていたんだからな」
ホームズ「調査能力が落ちているから客観的証拠をつかむことができず、自白に頼らざるを得ないのさ。今回は,買収資金の出所も特定できず、被告にアリバイがあったりと杜撰そのものの捜査だった」
鬼平 「その自白だって、百日以上拘置したり、取調中に捜査員が被疑者の足をつかんで踏み字をさせるなんて滅茶苦茶、人権無視もはなはだしいやり方だ。捜査員が処罰されないなら連中は、自白を得るため、平気で拷問を今でもやりかねないと思わせる」
ホームズ「今回は県警本部捜査2課の警部と志布志署長が主導した捜査だという。警察の誰かが“画を描き”、それに合わせた自白調書を取ることが優先されるようになったら、いくらでも、でっち上げは行われるだろう。もし、これが珍しくないとしたなら、えん罪は日本中にごろごろありそうだな」
鬼平 「この件で警察は怖いと多くの人が思っただろう。へたに警察と関わりを持つと、事件をでっち上げられ,いつ犯人に仕立て上げられるか、わからない」
ホームズ「知人が最近、警察にやられた」
鬼平 「拘置されて自白を強要されたのか」
ホームズ「謝罪させられただけで済んだというから、実害はなかったのだが、知人は、警察を許さない,今後一切、警察には協力しないと言っている」
鬼平 「どんな事情なんだ?」
ホームズ「知人は、電車の中で酔っぱらい3人に絡まれ、駅で降ろされ、人気のない方に連れて行かれそうになり、抵抗して駅員事務所にたどり着いたという。駅職員の通報で警官が10人ほど来たそうだが、急に酔っぱらい1人が引っ掻き傷を示し、知人につけられたと主張し始め、ほかの酔っぱらいも大声で警官に喚き立てたそうだ。知人は、引っ掻き傷の箇所付近には触れていないと説明したが警官は取り合わず、知人を取り囲んで『傷害罪ですぐ拘置するぞ』と繰り返し脅し、結局、酔っぱらい3人に謝罪させられたということだ」
鬼平 「被害者を先方に演じられたということか。でも、拘置されなくてよかった」
ホームズ「知人は割に保守的な人間だが、警察にかなり強い不信感を持ったようだ。そりゃそうだ、酔っぱらいに絡まれて助けを求めた警察に、逆に悪者扱いされたんだからな」
鬼平 「そうやって警察に不信感、反感を持つ人を増やしているのだから、警察への情報提供も減るはずだ。それで、調査能力の落ちている警察はますます自白に頼るようになる…。今回は鹿児島地裁がちゃんと調べたから、被告は無罪となったが、全国の警察がそんな状況では、裁判所がうかうかしていると、本当は無罪なのに泣き寝入りさせられている人が結構いるかもしれないな」