望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

電気でレース

 日本でF1レースに人気があった頃、フジテレビはわざわざ夜中に日本でのレースを録画で放送していた。「生で観たけりゃ、チケットを買って鈴鹿に来い」という高ビーな態度が漂っていて、鼻白んだものだった。それでも、セナなどが活躍していて、それなりに、F1文化なるものは定着したようだった。



 それが、いつの間にかフジテレビは昼間に生中継をするようになったが、新聞を見て「今日、F1の日本グランプリがあるのか」とやっと気付く程度の存在になっていた。塗装こそ違うものの、同じような格好の車が次々と走っているだけで、ドライバーの表情が見えるわけでもなし、退屈な中継の垂れ流し。スリルを感じさせる事故を増やして、視聴者をつなぎ止めるわけにもいかないしね。



 「走る実験室」と呼ぶ人もいるモータースポーツの最高峰がF1とされている。一方で市販車では、CO2削減や低燃費指向が重視され、世界的にハイブリッド車が普及し始め、電気自動車の開発競争が激化している。F1がいつまでも、ガソリンを使う内燃機関のままでいいのか。



 F1もチェンジしなければね。市販車開発と関連させて、F1参加を「正当化」できる条件があれば、各メーカーは撤退しなかったかもしれない。F1が現代の「走る実験室」になるには、動力を電気とするしかないだろう。



 レース距離を現行と同じにし、同じ車両で走り続けるなら、途中で「燃料補給」(バッテリー交換)が必要になるので、ピットインも存続する。もちろん、バッテリーをさらに小型化することは欠かせないし、事故が起こった時に、ドライバーやマーシャルらに対する安全性が確保されることは前提条件だ。



 電気F1レースの最大の問題は、バッテリーやモーターなどでメーカー間の技術格差が結構あるので、ドライバーのウデの差よりも、例えばバッテリーの差によって勝敗が左右されそうなところかもしれない。まあ、ガソリンエンジンのF1でも、ドライバーのウデの差で必ず勝敗が決まるというものでもないので、同じようなものかもしれないが。