日本は人口が多い国だ。日本人の各自がそれなりに収入を得ていた頃は、日本のGDPも順調に伸びていたが、非正規雇用が増えたことなどにより、各自の収入が減り、その結果、GDPも減ることになる。単純に考えれば、「各人の収入×人口」のうち、各人の収入が減っているのだから、日本のGDPが縮小するのは当然か。
戦後の日本は、農家など第1次産業の次男、三男が第2次産業に就業して高度成長を支え、さらには第3次産業への労働力移行により経済・社会の高度化を実現した。しかし、バブル破綻以降、日本経済は縮小し、第2次産業では欧米やアジアへの工場の海外移転が加速し、第3次産業でも情報化・ネット化の進展で人手が少なくて済むようになった。
少なくて済む……を言い換えると、人員が過剰になったということ。民間企業は社会福祉のために存在しているわけではないので、企業自身が苦しくなると、身軽になるために従業員を放り出す。あるいは、それまでより低賃金で雇用する。
従業員・社員というのは消費者であるから、収入が少なくなれば個人消費は落ち込む。社員を減らし、工場を海外に移転し、IT化を進めて企業が「筋肉質」になったとしても、収入が減った日本人が増えると国内消費は落ち込む。そうした結果として日本経済は、需給ギャップが25兆円とも言われるほど需要が減り、浮上のめどが立たない低迷が続いている。
第2次産業にも第3次産業にも雇用吸収力が失われつつある。人口の多い日本だが、仕事のある海外へぞくぞく移民するほど、人々に対応力があるわけではない。言い方を変えると、穏やかな気候で穏やかな暮らしができる日本で住むことを多くの人は望んでいる。それに、植民地を世界のどこかに確保して、人々を移住させるというような時代ではないしね。
つまりは政策として、第2次産業や第3次産業で吸収できなくなった人々=労働力を国内で移行させなければならない。人手を多く要する国内産業とは何か。残っているのは第1次産業である。その第1次産業はどういう状況にあるか。農業も漁業も従事者は高齢化し、このままでは10年保たずに崩壊するかもしれない。
2010年の農林業センサスによると、農業就業人口は260万人で5年前に比べて75万人減り、平均年齢は65・8歳となり、初めて65歳を超えた。就業人口は85年には543万人だったというから、25年間で半減したことになる。
第2次産業や第3次産業で吸収できなくなった人々を第1次産業に移行させるには、就業を促す制度構築が必定だ。例えば全国各地の農協や漁協が生産法人をつくり、そこの社員として雇い入れ、農家や漁家に派遣する。当初は労働力として経験を積み、3~5年で独立できるようにする。
第1次産業に従事するなら高収入は望めないだろうが、「食べて」いくことはできよう。都会で非正規労働を続けていると、低賃金で結婚もできないなんて言われるが、第1次産業でやって行くことができる人たちなら、家庭を持つことも可能だろう。第1次産業に人々を吸収し、若返りを図りつつ強化することを日本はすぐにでも始めるべきだ。