望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





人口減少と移民

 2010年の国勢調査によると日本の総人口は1億2805万人だった(日本人の数は1億2535万人)。日本の総人口は江戸末期は3千万人台半ばだったが、明治に入ってから増え始め、特に20世紀になってからは顕著に増え、1900年4385万人、1925年5974万人、1950年8320万人、1975年1億1194万人と、この75年間の増加率は年平均1%を超えた。だが1975年~2004年の増加率は年平均0.5%弱と鈍化し、05年は0.05%まで少なくなった。



 出生率を見ると日本では終戦直後には4.5以上だったが、その後は減少傾向を続けた。2005年に1.26となった後は上昇傾向に転じ、2010年は1.39。ただ、自然増と自然減の境目は2.08ほどとされるので、このままでは日本の人口は減少して行くことになる。



 減少が続くと日本の総人口は、国立社会保障・人口問題研究所の推計では2022年に1億1千万人台になり、2042年には1億人を割り、2050年には9000万人も切るとしている(この推計は出生率を低位、死亡率を中位と仮定した場合。出生率が上がれば人口減少は緩やかになり、出生率を高位と仮定すると、1億人を割るのは2053年)。



 日本の総人口が減少すると様々な社会的変化が生じる。その一つに、高齢化もあって労働人口が減少するため、経済が縮小するとの懸念がある。それを避け、日本経済の活力を維持するために、欧米のように移民を受け入れて労働力の減少を防ぐべきであるとの主張がある。欧米メディアによく出ているようだ。



 難民等の受け入れが少ない日本は「閉ざした」国に見えるのであろうし、外国人が日本で就業することに制約が多いとするなら、日本はもっとオープンになり、世界から人材を受け入れるべきだろう。ただ、日本はオープンになるべきであるという視点と、日本の人口が減少していることを安易にダブらせて、移民を受け入れることが解決策だと言うのは皮相的な見方でしかない

。

 外から「補充」して総人口を減らさなければ日本経済の活力が維持できるかというと、そうとも言いきれない。自動車メーカーなど輸出型の日本企業は世界各地に工場を建設し、円高もあって日本国内での投資は控え気味。総人口が減り、労働人口が減っても、日本国内での雇用が減っているなら、移民受け入れを増やしても失業者を増やすだけになりかねない。



 ただ、移民により人口が増えて、内需が活発化する可能性はあるが、それは移民が就業できることが条件。日本がオープンにならざるを得ないなら、移民受け入れで活性化する分野=人手不足が顕著な分野をまず受け入れ先にするテがある。就業者が減り、後継者が少なく高齢化が進行している分野といえば農林漁業が代表だ。研修生制度は止めて、将来の担い手を世界から求めて育成する制度を構築して、人手不足の分野から移民を受け入れることは産業政策としてアリかもしれない。