望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

軽自動車を世界規格に

  2014年の新車販売台数は556万台だが、登録車329万台、軽自動車227万台で軽自動車が4割を占めた。乗用車に限ると、車種別販売台数ベスト10のうち7台が軽自動車であるなど、軽自動車の比率は高くなる。軽四輪車の保有台数(2014年12月末現在)は2988万台で、世帯当たり軽四輪車の普及台数は100世帯に54.0台と普及度は高く、人々の“足”となっている。

 世帯当たり普及率が高いベスト5は佐賀県鳥取県、長野県、島根県山形県の順。低い方から普及率をみると、東京都、神奈川県、大阪府、埼玉県、千葉県の順になる。「100世帯に100台(1世帯に1台)以上の普及」は6県。「同50台以下の普及」は8都道府県(全国軽自動車協会連合会の集計)。ちなみに東京都の普及率は11.8%。

 そんな軽自動車の規格に数年前のTPPの日米協議の時に米国側から、非関税障壁であるとして撤廃要求が出されたという。公式に話は出ていないと経産省は否定し、やがて、アメリカ側の関税撤廃を遅らせることで自動車を巡る交渉は一段落したので、軽自動車の規格を巡る話は立ち消えになった。

 TPPに関する各国の交渉は秘密にされた部分が多いので軽自動車規格について、どのようなやり取りが実際にあったのかは詳らかではないが、日欧EPA交渉でもEU側から軽自動車規格を問題視しているなどの報道が現れるなど、日本独自の軽自動車規格には欧米が関心を持っているらしい。普通車を主力とする国内メーカーが一連の報道の裏で糸を引いているとの見方もあるが。

 日本独自の製品や規格を「ガラパゴス」だと揶揄(卑下?)する見方は、評論などでは珍しくない。世界市場で少数派であることが批判の根拠となる。日本国内で商売になっているのだったら、そんなに揶揄(卑下)しなくてもいいいのにとも思うが、西洋崇拝の残滓は日本人の思考にこびりついているから、そこにグローバルスタンダードという呪文をまぶすと、ガラパゴス=悪いこと、とのイメージが完成する。

 しかし、発想を変えると、軽自動車の規格は世界に広めるべきものだろう。大人4人が乗れるミニマムサイズで、排気量が小さいのでガソリン消費量も抑制される(はず)。ドイツ車をはじめとして欧州では自動車の大型化が進むが、CO2排出規制に直面して方向転換を迫られている。EUが軽自動車規格の導入を行ったなら世界規格にもなろう。

 大人1、2人が移動するたびに、車重2トン以上で全長5メートルにもなる車を使用しなければならないのかという疑問を持てば、軽自動車の存在意義が見えてくる。軽自動車規格は、都市化する世界に最適な、エコでコンパクトな移動手段の現実的な提案である。日本が提案して世界に広めることは、ガラパゴスなどと言って国内で揶揄(卑下)しているよりも建設的だ。