望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

巨大ブラックホール

 地球が属する太陽系は天の川銀河の中にあり、天の川銀河の中心には太陽の400万倍の質量のブラックホールがあるという。ブラックホールはその重力によって光さえ閉じ込めるので見ることはできないが、ブラックホールに超高速で吸い込まれる大量の物質の摩擦により周囲が光り輝く。天の川銀河の中心にあるブラックホールの画像が2022年に公開され、明るい光の中心に暗い領域がぼんやり映し出されていた。

 ブラックホールの大きさは様々で、太陽の数倍ほどから数十億倍の質量のものが知られているが、さらに太陽の数百億倍のものも存在すると考えられている。ブラックホールは周囲の恒星などを吸収したり、他のブラックホールと合体することを繰り返して巨大化すると考えられているが、138億年前に宇宙が誕生して、その数億年後に巨大ブラックホールが存在していたと明らかになった。

 英国などの研究チームは、宇宙誕生から4億年後に、質量が太陽の数百万倍という巨大ブラックホールが存在していたと発表した。太陽の数百万倍の質量のブラックホールが形成されるには、従来は約10億年が必要と考えられていたが、発見されたブラックホールは宇宙誕生から4億年後に存在していた。研究チームは、発見したブラックホールは従来の考えとは異なる過程で形成された可能性を指摘した。米ハーバード大学などの研究チームは、宇宙誕生から4億7000万年後にはすでに大質量ブラックホールの形成が始まっていたと発表した。

 東大宇宙線研究所などの研究チームは、宇宙誕生から10億~20億年後の120億~130億光年先にある銀河185個のうち10個で、ブラックホール由来となる特徴的な波長データを発見した。ブラックホールの質量は太陽の100万倍から1億倍で、宇宙誕生からはるか後に形成された同規模の銀河のブラックホールよりも10~100倍大きく、急成長したと考えられると研究チーム。

 国立天文台などの研究チームは、宇宙誕生から9億年後の129億光年先にある成長の初期段階の暗いクエーサーのペアを詳細に観測したところ、二つの銀河が合体して超巨大な銀河になろうとしているところで、高光度クエーサーの祖先であるとした。極めて明るく輝く高光度クエーサーは巨大ブラックホールの存在を示すものであり、初期宇宙における天体の進化を明らかにする大きな手掛かりとなる発見だという。

 宇宙誕生から数億~20億年後の初期の時代に、巨大ブラックホールが数多く存在していたことは確実なようだ。観測精度が上がるにつれ、さらに多くの巨大ブラックホールが発見されるかもしれない。素人考えだがと前置きして友人は「宇宙誕生では現在の宇宙全体の質量の数十倍の質量が誕生し、現在よりもはるかに狭い宇宙で数億年で次々と巨大ブラックホールになった。それらの大量の巨大ブラックホールは現在の宇宙の外縁部に散らばっている」とした。

 続けて友人は「宇宙の外縁部に散らばる大量の巨大ブラックホールが宇宙の中心とは反対側に動き続けているため、宇宙の膨張が加速されているんじゃないか。ダークエナジーと宇宙の外縁部に散らばる大量の巨大ブラックホールには何かの関係がありそうだ」と直感したそうだ。星空を見るのが好きで、天体望遠鏡を買おうと思いながら数十年を過ごしてしまった友人は、数年後の定年退職を機に天体望遠鏡を買うことにしているという。