望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

終末の日

 古代マヤ暦に基づき2012年12月21日が「世界終末の日」になると騒がれたが、世界的に大した出来事はなく、その日が過ぎた。ノストラダムスの予言でも、空から何かが降ってくると不安がられたが、その日にテポドンが落ちて来ることもなく、無事に過ぎた。

 マヤ暦に基づく終末の日なるものを、本気で信じた人が世界にどれだけいるのか不明だが、いいネタにはなったようだ。例えば、観光キャンペーンもあってか中南米マヤ文明関連の土地に観光客が押し寄せたり、「箱船」や地下核シェルターが注目されたり、生活必需品の買い占めが起きたり。

 人々はなぜ、終末の不安を煽る予言に反応するのだろうか。2000年問題のように、コンピューターが誤作動を起こす可能性があるなどと具体的に示されれば不安を感じるのは当然だろうが、「マヤ暦による終末の日」などは、そのときに起きることが具体的に示されないから、個人の不安感が増幅される。つまり、不安に反応しやすい人は過剰に反応することにもなる。

 一方では、終末論を楽しむ人もいる。終末に関する騒ぎを楽しむ人もいれば、終末が来ることの危機感、緊張感を支えに自説を言い立てたりする人もいて、本人はまじめなのだが、終末が来ることを願っているとしか傍からは見えなかったりする。宗教的背景も、終末論の受け入れやすさに関係しているのかもしれないが、異教の終末論に反応するのであれば、やはり個人の資質によるところが大きいのかもしれない。

 冷静だったのが、ロシアのプーチン大統領の発言。記者会見で「世界の終わり」について聞かれ、「(太陽が寿命を迎える)45億年後に全てが終わる」と述べた。これは、やがて太陽が膨張し始めて、地球との距離が縮まり、太陽から届く熱が大幅に増えて、地球上のものは全て焼き尽くされる未来を示したもの。

 太陽系の全質量の99.86%を占める巨大な太陽は、中心核で熱核融合が起きているが、やがて中心部から周辺に熱核融合が広がる。現在は、熱核融合により膨張しようとする力が、重力により収縮しようとする力とバランスをとって太陽の大きさはほぼ一定に維持されているが、やがて膨張しようとする力のほうが大きくなり、太陽は巨大化を始め、水星と金星は飲み込まれる。ただ、時期については諸説あり、45億年後と決まったわけではなく、太陽の膨張が始まるのはもっと先だともいう。

 地球上の生命にとって終末は必ずやってくるのだが、数十億年先のことを言われても、個人には寿命があり、また、人類がこの先、数十億年あるいは数億年、地球上で子孫を繋ぐことができるのかと考えると、人類にとっての終末は別の形になるかもしれない。その終末は予測不能だろうから、予言は楽しむ程度に止めておくことが賢明か。