ウクライナ軍は侵攻してきたロシア軍に対して、トルコ製の軍用ドローン「バイラクタルTB2」も活用して攻撃し、戦車など多くの戦闘車両を破壊したと伝えられる。同ドローン製造元の企業は「技術の進歩が戦闘手段に劇的な変化をもたらしている」とし、「最先端の地対空システムや先端的砲兵システム、装甲車を破壊することで成果を上げている」「全世界が顧客だ」と拡販を狙う。
ウクライナ軍は同ドローンを使ってロシア軍の戦闘車両や弾薬貯蔵庫などの破壊に成功した映像を積極的に公開するので、ドローンを活用したピンポイント攻撃が非常に効果的だとのイメージが高まった。だが、ロシア軍の地対空ミサイルに撃墜されたドローンも少なくないと言われ、軍事用ドローンの使用で必ず戦場において優勢になることができるかどうかは不明だ。
同ドローンは長さ6.5m、翼長12mで、ミサイルやレーザー誘導爆弾などを4基(計150kgまで)装備でき、巡航速度130km/h、運用高度5500m、航続時間は27時間、製造コストは1億〜2億円とされる。初飛行は2014年で、中東やアフリカなど諸国に販売され、リビアやシリアでは内戦で政府軍が敵対勢力の攻撃に使用したという。
トルコ製ドローンを2020年のアルメニアとの戦争でアゼルバイジャン軍が活用した。アルメニア側はレーダーでドローンを有効に検知できず、また、ドローンを誘導する通信を遮断する機器を備えておらず、ドローンによる偵察と集中的な砲撃などの攻撃を連動させたアゼルバイジャン軍が優勢に戦いを進めた。停戦合意でナゴルノ・カラバフの大部分を得たアゼルバイジャンの勝利に寄与したとトルコ製ドローンは注目されていた。
軍事用ドローンはミサイルなどを搭載して攻撃力を有するが、民生用のドローンでも偵察やミサイルなどの誘導に活用できる。ウクライナの戦場では米国製や中国製のドローンを双方の軍が偵察などに使用しているとされ、ウクライナは中国DJI社のドローンがロシア軍のミサイル誘導に使われていると批判、中国DJI社はロシアとウクライナでの事業活動の一時停止に追い込まれた。中国DJI社のドローンは世界の多くの軍事紛争地域で活用されているという。
ドローンは戦場の様相を一変させた。偵察衛星による情報は断片的だが、戦場上空で飛行し続けるドローンはリアルタイム(即時)の戦力配置などの情報を提供する。ドローンの登場で、戦場で部隊や兵は常に見られている状況になった。今後の戦場においては、いかにドローンの偵察や攻撃を阻止するかが重要になり、ドローンに対する補足能力と攻撃力が勝敗を左右するかもしれない。
戦場の上空に長時間滞在することでドローンは偵察やピンポイント攻撃の効果を発揮できる。だが、軍事用ドローンは大量の燃料を積載する必要があり、大型化する。それはレーダーに捕捉されやすくなることでもある。やがてドローンは自律飛行するようになり、AIなどで判断して敵目標を攻撃するとともに防御行動もできるようになるだろう。人間不在のドローンが地上の人間を殺傷することが戦場の日常となる。