中国海軍が「元気」いっぱいだ。原子力潜水艦や航空母艦などの建造を増やし、10年以上前に、米太平洋軍の司令官に中国海軍幹部が「ハワイ以東を米国が、ハワイ以西を中国が管理したい」と打診していたという。ハワイ以西って……日本も入ってる!
中国海軍の大規模な潜水艦基地があるという海南島周辺では、米海軍音響測定艦の行動を中国の漁船なるものが実力で妨害するなど米中のつばぜり合いが行われている。南沙諸島での基地建設、西沙諸島での滑走路建設など、着々と中国海軍は南シナ海での展開能力を拡大している。
中国で海軍がなぜ「元気」になったのか。おそらく、北方からの軍事的圧力が減少したことが大きい。中国は、北方への備え(陸軍)を軽減することができたので、「安心」して南方へ出て行き、海軍の増強を進めることができるのだ。
歴史的に見ると、中国には常に北方からの圧力があった。古くは万里の長城、これは北方からの侵略に備えるものだったし、近代以降を見ても、ソ連は満州の権益を狙い、新中国成立後の中ソ対立時には軍事面を含めて緊張が続いていた。
それが、プーチン・ロシアと国境問題を解決し、緊張関係を解き、経済関係を強めた。現在の中国は、歴史的と言えるほど、北方からの軍事的圧力が小さくなった状態にある。ロシア(ソ連)と米国の2正面作戦を余儀なくされていた中国軍は、北方の緊張が低下したことで、「安心」して海側に出てくることができ、それが中国海軍の「元気」さとなって表れている。
中国海軍の増強に米や日本が軍事的に対応するのは軍拡につながる。米などの軍産複合体にとっては、それも「望ましい」状況なのだろうが、周辺の海で緊張が高まることは日本にとっては歓迎すべき状況とはいえまい。
政治的に中国海軍の増強を抑制するためには、中国とロシアの間に「クサビ」を打ちこむことだ。中国古典のおチエを借りて「離間の計」がいい。でも、日本の外交にそんなことは期待できそうにないか。