望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり





「友」を見分ける

 え~、落ち目にはなりたくないものですな。GDPで中国が日本を抜き、中国は今後も成長を続け、失われたン十年の日本の低迷はまだ続きそうだと、欧米などはすっかり中国になびいております。なに、金のあるところに群がるのが欧米の習性。成熟した市場で参入しにくい日本から欧米が、市場が未熟でウマ味が多そうな中国に軸足を移すのは当然でしょう。



 落ち目にも一つ良いところがありますな。それは、本当の友を見分けることができるということでしてね。金を持っていれば、笑顔で寄ってくる友に事欠きませんが、落ち目で金がなくなれば、そうした友は去って行く習い。日本にとって、信用できる「友」はどの国なのか、今が見極めるチャンスですぞ。



 ロシアは日本にとって、どういう存在なんですかね。あまり好かれてはいない国でしたが、ソ連が崩壊してロシアになっても、日本の友にはなれませんでしたな。政治的には自由選挙を行うようになったとはいえ、強権体質を引きずり、ナショナリズムが体制維持には欠かせなくなったロシア。周辺国にとっては相変わらず、やっかいな相手のようで。



 2010年、ロシアの当時のメドベージェフ大統領が9月に訪中し、胡錦濤国家主席と「第二次大戦の結果見直しを許さない」とする終戦65周年の共同声明に署名しました。日中の緊張関係に便乗して、火事場泥棒的に北方領土占領を正当化する狙いかと見られますがね、準備の時間を考えると、9月2日を大戦戦勝記念日とする法案制定とセットで考えられたものとも見えますな。



 ロシアが日本の友でなくても構いませんがね、友でなくても友のふりを装って、笑顔で握手してみせるのが外交。それなのにロシアが日本をはっきりと標的にし始めたのは、日ロ関係の悪化を容認したからでしょう。ロシア外交における日本の位置づけは相当低下したんでしょうな。



 当時の新聞に載っていたロシアの外交評論家が面白いことを言ってました。彼は、ドイツのファシズムと日本のファシズムは同じような全体主義だとし、ソ連全体主義も同一だと批判するんですな。ただ、ドイツと違って日本は歴史的責任を周辺国に許されていないと言い、今のロシアには大戦の結果を見直す試みに対抗することが重要だと正当化したんです。



 彼は、ソ連を含めて全体主義批判をしているようですがね、現在も全体主義である中国については、第2次大戦で共に日本相手に戦った同士という位置づけで誤摩化しましたな。全体主義が打倒すべき悪だというなら、現在のロシアが標的にすべきは中国のはず。日本よりも中国のほうが金払いが良さそうだから乗り換えた……なんて外交では正直には言いませんな。



 こう、ありたいものですな。外交では自国の利益を最優先させることを基本に、できるだけ多くの国と友好関係を演じたり、緊張を低下させたりしながら、自国の利益を侵害する国が落ち目になったならば、容赦なく叩く……立派な外交であるのかどうかは知りませんがね、少なくとも国民はモヤモヤとした思いを抱かなくて済むでしょうな。今度は日本の番です。変化したロシアをどう利用するか、日本外交の腕の見せ所ですな。