リビアの「革命指導者」というカダフィ大佐は41年も権力を握り続け、エジプトのムバラクは30年、チュニジアのベンアリは23年だった。
独裁者が長期にわたって強権を振るい、その親族と取り巻きだけが肥え太って行く社会に暮らすとは、どういうものなのだろうか。法に超越する権力者がいるのだから、議会や裁判所があったとしても無意味だろうし、治安警察が眼を光らせ、聞き耳を立てている。平穏に暮らすためには人々は、政治や社会のことには無関心でいるか、無関心を装うしかない。
日本では以前、首相が1年ほどの短期で交代することが続いた。誰かがやっと首相になっても、隔週ごとにメディアが世論調査の結果を大々的に報じ、たちまち不支持が支持を上回ったりする。こんな社会に暮らすと、内政・外交の課題ばかりが目につく一方、政権を狙う連中の右往左往ばかりを見せつけられ、フラストレーションが高まったりする。心静かに暮らすためにはやはり、政治や社会のことには無関心になったほうがいい?
長期独裁政権を実現するヒケツは何だろうか。その条件は、1)暴力(軍+警察)を独占する、2)法の支配(法治)に超越する、3)経済成長の成果を権力で独占する、4)米欧などの有力国との経済的・軍事的関係を深める、5)反政府・反体制活動家など国内に敵を設定、排除する……などか。
一方、短期政権を実現するヒケツは、1)力量・見識・識見がとぼしい人物を首相にすえ、実力者を排除する、2)行政の実権を官僚が握る、3)次期首相候補を常に用意する、4)首相批判をメディアを含め常に高める、5)政治を軽んじる風潮を養成し、首相に無力感を実感させるようにする……などだろうか。
日本は民主主義国だから、政治を比較するなら欧米と比較すべきで、まともな選挙が行われていないエジプトやリビアと比較するのはおかしいのだろうが、政治が不安定化していると見えたのも確か。まあ長期独裁のムバラクやカダフィよりは短期交代の日本のほうがマシと思うしかないか。