地球は磁気を帯びており、北極にS極、南極にN極がある。このためコンパスのNは北を示し、方位を知ることができる。この南北の極性は永遠不変ではなく、数十万年ごとに逆転する。最も新しい逆転が起こったのは78万年前だが、周期性はないようだ。研究では、100 万年に 1.5 回の割合で逆転を繰り返すが、その割合は不規則で、白亜紀には1千万年以上も逆転のない期間があったとされている。
太陽も磁気を帯びているが、こちらは11年周期で南北両極の極性が逆転するという。11年といえば、太陽黒点の増加と減少の周期でもある。太陽黒点は強い磁場活動により表層面の対流活動が抑制される領域で、周囲よりも温度が低いために暗く見える。低いといっても約4千度ある(太陽表面は約6千度)。黒点が多くなれば太陽活動が活発になり(極大期)、少なくなれば活動は穏やかになる(極小期)。
太陽では2007年観測で北極がS極、南極がN極となっていた。太陽活動は極小期を過ぎて活発化しつつあるので、2013年半ばの太陽活動の極大期には両極域の磁場が同時に反転すると予想されていた。ところが太陽観測衛星「ひので」の2012年の観測結果から、北極域だけS極からN極への反転が進行していることが判明した。
発表によると、太陽活動の極大期の2013年5月より約1年早く、北極磁場がほぼゼロの状態に近づいており、まもなくN極へ転じると予想されるが、南極では極性反転の兆候がほとんど見られず、安定してN極が維持されているという。太陽の磁場は、棒磁石のような構造(例えば、太陽の南極がN極、北極がS極)をしているが、今回の観測結果から、南北の両方がN極になり、太陽の中心あたりにS極ができる四重極構造になると想定されている。
四重極構造とは棒磁石が二つ連なった構造だが、この場合の棒磁石は同じ極を向け合っている。棒磁石を乾電池に例えると、二個の乾電池がマイナスどうしをくっつけている形だ。太陽の磁場が一つの棒磁石のようなら、磁力線は南北の極の間につながリ、太陽全体を包む。四重極構造になると、磁力線は南北両極がそれぞれ赤道辺りとつながることになり、磁力線は鏡餅のような格好になる。
太陽系の中心である太陽は、地球に光と熱を与えてくれる存在だ。その太陽で珍しい現象が起き、地球への影響が今後どう現れるのかが懸念される。発表では「観測結果は、太陽の内部で磁場を生み出すダイナモ機構の状態が、現代的な太陽観測が始まって以来初めて、変動を来していることを示す。地球が寒冷であったと言われるマウンダー極小期やダルトン極小期には、太陽がこのような状況にあったと考えられており、今後の推移が注目される」としている。
ん? 寒冷化するの? 温暖化するんじゃ、なかったの? でも、人間活動によるCO2排出による温暖化なるものと、太陽系の全質量の99.86%を占め、太陽系の全天体に重力の影響を与えるほどの存在の太陽とでは、太陽の「変動」の影響のほうが遥かに大きいことは間違いないだろう。寒冷化と温暖化が張り合ったなら、太陽活動の変動による寒冷化のほうが勝りそうだ。