望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

失速した自転車シェア

 中国で2016年頃から急速に広まったシェア自転車ビジネス。いつでも街中で手軽にモバイル決済の低料金で自転車を使うことができ、どこにでも乗り捨てることができるから便利だと賞賛する記事が日本でも多かった。その、もてはやされた新しいビジネスが急速に色あせた。

 都市の中のあちこちに自転車を置いた後は、利用者が勝手に自転車を利用し、料金はモバイル決済で確実に入金されるのだから儲かると次々に企業が参入した。街中には各社が設置した自転車が溢れ、あちらこちらに、乗り捨てられた自転車も溢れた。

 2017年の後半から中国の多くの都市で新規参入の規制が始まり、中央政府も規制を始めた。街中の放置自転車を事業者が回収して、所定の貸し出し場所に移動させているそうだが、自転車の状態は悪化する一方。

 北京市だけでシェア自転車は200万台以上になるというが、自転車をばらまいて置いておけば儲かると次々に参入した業者が、自転車の状態の管理に気を使うはずもなく、汚れ放題で、傷ついたり、どこかに不具合がある自転車も珍しくないとか。

 シェア自転車ビジネスに続くのがEVによるシェア自動車ビジネスだと注目する記事も多いが、利用者が乱暴に扱うことは自転車も自動車も変わらないらしい。仏で行われていたEVによる自動車シェア事業は中止に追い込まれた。

 こちらは、どこでも乗り捨て自由とはいかず、決められた場所(ステーション)で貸し出し・返却を行うのだが、ステーションの設置コストを賄うほどの利用はなく、採算が取れなかった。使われていたシェア自動車は内外ともに汚れていて、ステーションの内部も汚れ放題だったとか。

 自転車や自動車のほかにもシェアというビジネスが、大量消費や使い捨てを否定し、人間関係を重視する経済として注目されている。だが、自転車や自動車のように、シェアした人が雑に扱うなら、シェアする対象を管理することが重要となる。ここに新しいビジネスチャンスがある?