望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

武器はドローン

 サウジアラビアの国営石油会社の施設2か所が9月14日、ドローンによる攻撃を受け、生産が一部停止した。生産が止まったのは日量570万バレル分で、同国の原油生産の約50%分、全世界の5%分に相当するという。

 10機のドローンで2か所の施設を攻撃したとする声明をイエメンのシーア派民兵組織「フーシ派」が出したが、トランプ米政権とサウジアラビアはイランの犯行と主張し、18日にサウジアラビア国防省は自爆ドローン18機と巡航ミサイル7機による攻撃だったと発表した。

 民生用ドローンはすでに広く使われている。ドローンによる空撮影像を活用するテレビ番組は珍しくなく、農業では農薬散布など、建設業では測量や検査など、警備業では見回りや侵入者の探知などに使い、物流では配送への活用を目指しているほか、災害や事故の被害状況の把握に利用することが自治体などで進められ、災害や事故の調査に保険会社も利用する方向だという。

 軍事用ドローンの実用化では米国が先行し、高性能な各種の航空偵察用ドローンに加え、海兵隊分隊ごとに小型の偵察ドローンを配備したという。各国も軍事用ドローンの開発を進め、特に中国の軍事用ドローンは技術的に米国に迫っているとか。中国は中東やアフリカ諸国などで軍事用ドローンの販売を伸ばしているとされる。

 軍事用ドローンは偵察用途を目的に開発されたが、やがてミサイルやロケット弾などを装備して攻撃能力を備えるようになり、さらには標的を狙って長時間飛び続ける自爆用ドローンなども開発された。すでに民生用ドローンに爆弾などを持たせて攻撃に利用することは中東などの紛争地で珍しくなくなった。

 小型のドローンは低空を飛行するのでレーダーでは捕捉できず、肉眼でも見分けにくい。銃火器で撃ち落とすには弾幕を張らなければならないが、当たるかどうかは分からない。ドローン操縦の電波を妨害する方法も考えられるが、周辺地区に影響を及ぼす可能性があるほか、自動操縦になったドローンには効果がない。

 軍事用ドローンにはAIが組み込まれ、操縦者からの電波が遮断された時には、その時々の目的に合わせて自律的に行動するようになるだろう。だが、敵の軍事用ドローンなどを探知し、その行動を妨害して無力化する防衛用のドローンも各国で開発されているに違いない。ドローンに対抗できるのはドローンだけか。