望潮亭通信

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大規模な停電

 首都圏では台風15号の暴風により一時は93万戸以上が停電するなど広範囲で停電が発生した。特に被害が大きかったのが千葉県で、各地で電柱の倒壊や送電線の断絶などが発生、ピーク時には64万戸以上が停電し、停電解消まで2週間以上も要した。

 約2千本の電柱が倒壊したり損傷(経産省の推計)し、送電塔の鉄塔2基が倒れ、山間部などでは倒木による交通困難個所が多く作業車の通行が阻害されたりして復旧作業が遅れたという。被害状況の把握が遅れた東電は当初の被害想定が甘く、復旧見通しは修正に次ぐ修正を余儀なくされた。

 台風の暴風で多くの樹木がなぎ倒されたり枝が折れたりし、それらも電線や電柱を損傷させた。強い暴風が主原因だが、山林が手入れされずに放置されていたことも被害を拡大させたとの指摘がある。道路の周辺の樹木だけでも手入れし、倒木が通行を遮断しないように配慮しておけば復旧はもう少し早かったかもしれない。

 大規模な停電といえば、2018年9月の北海道胆振東部地震でのブラックアウト。一時は北海道全域のほぼ全世帯295万戸で停電した。苫東厚真火力発電所が道内需要のほぼ半分を発電していたが、その電力が被災で失われ、一気に発電量が減ったため周波数が低下(=停電)し、他の発電所も発電設備保護のために停止した。

 ブラックアウトで電気が来ない生活を人々は強いられた。電池式のラジオが主な情報源になり、スマホなどの充電場所を探した。車庫などの電動シャッターが動かず、ビルやマンションではエレベーターが動かず、汲み上げポンプが動かない家庭では水が出なかった。交差点では信号が消え、コンビニやスーパーに人々が殺到して食料品や飲料、乾電池、カセットボンベなどが売り切れ、ガソリンスタンドには長蛇の列ができた。

 同じことが千葉県でも起きた。千葉県の大規模停電は送電線網に多数の支障が生じたことで起き、北海道の大規模停電は主要な発電所が送電を突如停止したことで北海道全体での使用量と発電量のバランスが崩壊し、各地の発電所も送電系統から離れてブラックアウト(全系崩壊)に至った。

 ブラックアウトの教訓として、一か所の重要施設に頼ることの脆弱性が指摘された。発電所などは分散型の配置とし、自治体や企業は自家発電を含め非常用電源の整備などが対策として求められた。しかし、千葉県の停電では送電網の脆弱さが露呈した。多数の中規模の発電所を分散配置し、送電網を二重三重にすれば災害に強い系統になるだろうが、コストもかかる。電気に頼る現代生活は災害に脆弱であることだけはまた、明らかになった。