大きな地震の時に、揺れの強さを表す映像として、霊園で墓石がなぎ倒されている様子が報じられることがある。一般的な墓石は、台石の上に縦長の細長い石が載る形状だが、「○○家之墓」とか「南無阿弥陀仏」などと刻まれている細長い石が揃って倒れている様子は、揺れの強さをうかがわせると同時に、重い石を元通りにするのは大変だろうなと連想させる。
霊園で墓石は家ごとに分かれているのが通例だが、そうした墓石を持たない埋葬方式も都市部などで増えているという。ロッカー式の納骨堂などだ。墓石を持たない理由は、後継者難(子供がいないか、女の子しかいない場合)など。ほかに、田舎の先祖代々之墓に入ることに抵抗がある(特段の交流がない場合など)が、自前で建てるといっても霊園・墓石は高価なので納骨堂を選ぶことがあるとか。
墓石が不要といえば、散骨もそうだ。海などでの散骨は、養殖場などを避ければ、どこででも可能なのかもしれないが、陸上で行う場合には、どこにでも……というわけにはいかない。勝手に散骨することはできず、所有する私有地であっても、墓地埋葬法に引っかかる恐れがあるので、墓地などに指定された場所で行うしかない。
散骨ではなく、埋葬の新しい方法として注目されているのは樹木葬だ。日本で最初の樹木葬は岩手・一関市の寺院が、墓地としての認可を得た里山で遺骨を埋葬するようにしたケースだ。「自然に還る」ことが直感的に理解できるからか、樹木葬は広がっているようだが、東京都が小平霊園で樹林墓地を整備し、販売を始めてから注目度が上がった。
墓石を建てることに比べ、費用は大幅に安い。 小平霊園の樹林墓地は使用料(貸付時1回限り。2013年現在)は遺骨1体13万4000円、粉状遺骨1体4万4000円。もしかすると戒名代より安いかもしれない。さらに毎年の管理料はかからない。ただし、決められた地中の共同埋蔵空間に一緒に埋蔵されるため、他人どうしの遺骨が混ざり合うことになる。
小平霊園の樹林墓地では墓所内にはコブシ、ヤマボウシ、ナツツバキ、ネムノキ、イロハモミジが植えられている。樹木の下で“眠る”というイメージも樹木葬が魅力的にうつる理由の一つかもしれないが、樹木にこだわらなければ、様々な埋葬法の可能性が見えてくる。
例えば、季節ごとの花が咲く「花壇葬」。地中の共同埋蔵構造は小平霊園と同じだが、地上には樹木ではなく、様々な花を植え、花壇とする。里山を使うなら樹木葬のほうが似合うだろうが、都会の中の霊園なら、一面の花に覆われた花壇葬のほうが似合いそうな気もする。