望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

雪の重さ

 この冬も日本では各地で雪が降り、大雪になったところもあった。累計降雪量(2月23日現在)は北海道の音威子府村で880cm、幌加内町で777cm、沼田町で751cm、留萌市で691cm、夕張市で644cm、石狩市で587cmなどとなり、札幌市南区でも552cm、小樽市で492cm、旭川市で355cm、函館市で337cmなどとなっている。

 東北では青森市で534cm(酸ヶ湯で1196cm)、弘前市で461cm、湯沢市で666cm、米沢市で501cm、尾花沢市で700cm、只見町で879cmなど。さらに野沢温泉村で672cm、岐阜の白川村で532cm、魚沼市で866cm、妙高市で627cm、津南町で905cmなどとなる。日本海側の新潟県から鳥取県にかけても降雪は多く、山間部などでは300cm以上の場所も点在している。

 積雪の深さ(2月24日現在)は札幌市で78cm、小樽市で119cm、旭川市で68cm、函館市で27cmなど。気温や降雨や地形など諸条件によって積雪の深さは変化するが、「新雪の比重は0.1程度だが、上に降り積もる雪に圧縮されて徐々に重くなり、雪どけの頃には平均密度は0.4〜0.5g/cm3くらいにまで増える。深さ数mという雪深い地域での積雪荷重は水に換算して深さ1mほど、つまり1m2あたり1トンもの重さになる」(日本測地学会HP)。

 積雪量が多い土地では冬季には、かなりの荷重が地面にかかっていることになる。重いものを乗せるとゆがむのは地面も同じ。「最近のGPS衛星を用いた観測では、雪の荷重で日本列島が凹み、かつ縮む様子がはっきりととらえられている。雪の多い日本海側の山沿いを中心におよそ1cmの沈降、また雪の重みに引っ張られて日本列島は幅が3〜4 mm縮む」(同)という。

 プレートの移動により地面(地殻)は動いているとされ、地震などでも地殻変動は観測され、地面は不動のものではないのだが、毎年の雪が地面を凹ませていることを知ると、大自然の強大な力の作用を実感する。雨が粘着性の液体であったなら、集中豪雨や台風などの大雨が川などに流れず地面に堆積して、おそらく積雪以上に地面を凹ませるだろうが、雨は流れ去ってくれる(河川で氾濫などをもたらすが)。

 雪が凹ませるのは地面だけではなく、人の心も凹ませることがある。季節性うつ(冬季うつ)は冬になると症状が現れて、雪解けが進み、春の気配が漂い始める3月くらいに症状が消えるという。雪国の冬は晴天の日は少なく、低い雲に覆われ続け、雪がちらつき、風は冷たい。専門家によると「冬に気分が落ち込む要因が目に入る“光”の量にあると最近の研究で分かってきた」という。

 朝、太陽の光を浴びたり、散歩などで日光を感じたりするのは精神的に良い影響を与えるなどとはよく言われる。曇天が続く北国の冬には日光を浴びる機会が少ないが、春が近づくとともに晴天の日も増える。冬季うつが太陽光と関係があるのなら、季節の巡りが人の心も癒してくれることになる。春になってウキウキとした気持ちになるのは自然の恵みだな。