望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

悪の枢軸

 こんなコラムを2002年に書いていました。

 一番好きなのは日本のテレビ番組で、CNNもよく見ているという某国の総書記は、一人でテレビを見ていて菓子を咽に詰まらせて倒れたアメリカの大統領に「悪の枢軸」呼ばわりされて我慢がならない。といって、マスコミを使っての言論戦ではアメリカに太刀打ちできそうにない。

 そこで考えた。なんとか米ブッシュ大統領の鼻をあかす方法はないかと。スポーツではオリンピックを考えたが、アメリカびいきを克服するのは不可能と思い、メダル量産をあきらめ(現実に不可能)、総書記が映画好きなので世界的ヒット作の制作を考えたが、ハリウッドに対抗するのは無理とこちらもあきらめ、行き着いたのが、咽に詰まらない菓子の開発。

 サイズを小さくすれば簡単だが、それでは面白くない。ブッシュが咽に詰まらせたのと同じ大きさで、しかし、咽には詰まらない菓子。総書記の命令で国家の「頭脳」が集められ、考えついたのが主体思想的菓子。生地の練り方に工夫し、大きさはブッシュが咽に詰まらせたのと同じだが、仮に咽に詰まっても少し強い呼吸ですぐに崩れる。

 総書記は菓子の出来に満足し、これでブッシュの鼻をあかせると意気込み、色違いの3色を混ぜて1袋に詰め、ウケを狙って「悪の枢軸」の名で対米輸出を目論んだが、アメリカの許可が出ない。嫌がらせかといきり立ったが、この種の菓子は、アメリカ南部の特産で保護されていると判り、方向転換して、菓子にたっぷり白いクリームをかけて「モニカ」の名に変えると、すんなりアメリカからOKが出た。総書記は「クリントン」という続編も考えているという。