望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

国民の多く?

 こんなコラムを2002年に書いていました。

 アフガニスタンに元国王が帰国した日、NHKラジオのニュースで、現地に入ったリポーターは「国民の多くが歓迎している」と言っていた。はて、「国民の多く」ってどれくらいを指しているのか。このリポーターは何を根拠に「国民の多く」と言ったのか。

 元国王なる人は、29年前にクーデターで帰国できなくなったのだそうな。その後、アフガンではソ連の介入、ソ連撤退後の内戦など混乱が続いた。この間、元国王は何をしていたのか。29年といえば世代が一つ入れ替わる。戦乱続きのアフガンでは一つの世代だけでなく、もっと多くの人が死に、国を捨てた。

 元国王の帰国は、アフガンに「自治」の形を作らせようと欧米が押し付けたものだ。元国王の帰国を歓迎するのは、やっと生活の復旧に動き始めた一般の人々ではなく、権力争いに元国王を利用しようという人々だけである。だから、用がなくなればポイ。

 こうした中で、日本から行ったリポーターが「国民の多くが歓迎している」と言った根拠は、実はアフガンではなく日本にある。王族などの「象徴」を国民の「多く」が歓迎していると報道しなければならない事情がNHKにはある。日本政府関係者や保守系政治家がNHKを見、聞いているのだから。

 有事法案によるとNHKは有事には政府の管理下に置かれるという。「大本営発表」ばかりになるということだが、それなら現在と大して違いはない? ジャーナリストを気取るNHKなどの連中が権力に迎合するのは醜い。有事でもないのにさ。