望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

甘い、甘い「感動をありがとう」

 こんなコラムを2002年に書いていました。

 W杯の決勝トーナメント1回戦で代表チームはトルコに敗けた。予選リーグを突破したことでファンの気持ちは高まり、トルコなんかに敗けるはずがないといった気配が漂っていただけに、敗北による喪失感は大きかったか。

 ところで、健闘した代表チームをファンは温かく見送ったそうだが、「感動をありがとう」などの類いのメッセージもあったとか。それは違うだろう。予選を突破したことで100%満足したならともかく、決勝トーナメントに進出した以上、一つでも勝ち抜くことが新たな目標となる。

 敗けたなら、なぜ勝てなかったかを考えなければ、代表チームは強くならない。戦術などは監督が考えることで、ファンはただ騒いでいればいいというなら「感動をありがとう」もいいかもしれないが、そんなファンが、ここ一番に強いチームを育てることはあるまい。

 選手が精いっぱい頑張ったことを讚えることと甘やかすことは全く別物だ。頑張っても敗ける、それが現実だ。だが、頑張ったことを口実にさせては、いつまでたっても強いチームは生まれまい。

 今回のW杯でサッカーへの理解は多少なりとも深まったはず。代表チームがさらに強くなるか、W杯本大会への参加だけを目標とするチームとなるか。いいスタジアムも各地にできて環境が整ったいま、ファンが温かくも厳しい眼を持てるかどうかに掛かっている。