望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

ニューエコノミクス論があった

 こんなコラムを2002年に書いていました。

 7月19日のNY市場でダウ平均が一時8000ドルを割ったという。米企業の会計に対する不信と米景気の先行きに対する懸念によるものだとか。

 随分と風向きが変わってきたものだ。米経済が絶好調だった頃、ニューエコノミクス論なるものが聞こえてきた。それは「アメリカでは技術革新が続くので、もうアメリカには循環型の不況は来ない」というものだった。そんなバカなことがあるかと冷ややかに見ていたが、持ち上げていた連中も結構いた。

 経済評論家とは結構なご身分のようだ。基本的に、外が雨なら「天気が悪い」と言い、外が晴れなら「天気がいい」と“データをまぶして”言っておけば飯が食えるのだから。その一方で相場予測などしてみたって、そんな数字は誰も覚えてなどいない。

 会計基準もグローバルスタンダードに合わせなきゃいけないというわけで、アメリカ型の株価重視の会計に日本も移行しつつあるが、そのアメリカの企業会計が株価維持のため、日本でお馴染みの飛ばしや粉飾もあるなど相当イイカゲン。日米の違いは、問題が起きた後にアメリカでは公正で厳しい措置をすることだとの声も聞こえてくるが、なに「厳しい措置をしても構わない奴等に対して厳しくする」ということでは共通している。

 Japan as NO1と驕り高ぶり、投機に狂った日本。ニューエコノミクスで不況はもうない、USA NO1と勝ち誇ったアメリカ。宴の後、我にかえってみれば、日本では銀行が軒並み瀕死状態、アメリカの金融機関の状況は知らないが、こうも株価が下がると401kが不安。個人年金が消えてしまう人々がどれだけいるのか。

 こんな日本とアメリカで共通しているのは、それぞれの社会で貧富の差が拡大していることというのは、さて、ニューエコノミクスの成果なのだろうか、それともオールドエコノミクスで問題にしなければならないことなのだろうか。