望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

動物園にイヌやネコ

 今回のパンデミックでは外出が厳しく制約され、癒しを求める人々が増えたのか世界的にペットの需要が増えたという。だが、欧米などで対策方針がウイズ・コロナへと転換し、人々の生活がパンデミック以前に戻るにつれて、飼育放棄や動物保護施設に持ち込まれるペットが増えていると報じられた。

 保護犬や保護猫とは、飼い主が飼育放棄して捨てたり行政に持ち込んだり、劣悪な飼育環境から救い出されたり、繁殖引退、迷子になったりと様々な経緯で保護された犬や猫だ。動物愛護団体などが受け皿となって飼育しながら、譲渡会や保護犬・保護猫カフェやネットなどで新しい飼い主を探している。

 日本では50年ほど前には犬や猫の引取り数は年間125万匹ほどだった。そのうち返還・譲渡数は3万匹弱しかなく、120万匹以上が殺処分されていた。殺処分数は年々減少を続け、20年ほど前に年間50万匹を割り込み、10年ほど前に年間20万匹以下になり、5年前に年間5万匹を下回るようになった。

 最近の日本における年間の犬の引き取り数は27,635匹、猫の引取り数は44,798匹の計72,433匹だ(2020年度、環境省HP)。飼い主から引き取ったのは犬が2,701匹、猫が10,479匹だが、所有者不明は犬が24,934匹、猫が34,319匹。つまり引き取り数の81%は所有者不明だ。

 引き取られて殺処分されたのは犬が4,059匹、猫が19,705匹の計23,764匹。ほかに返還された犬が9,463匹、猫は255匹の計9,718匹、譲渡されたのは犬14,736匹、猫が25,130匹の計39,866匹だ。つまり処分される犬や猫の32%が殺処分され、54%が譲渡されている。50年ほど前に比べる殺処分数は劇的に減ったが、譲渡数の増え方は緩やかだ。

 ペットとして飼われる犬や猫は全国で1605万匹(犬710万匹、猫895万匹)という(2021年、ペットフード協会。インンターネットによる調査)。入手先は犬は「ペットショップで購入」が過半数だが、猫は「野良猫を拾った」「友人や知人からもらった」がそれぞれ3割前後となる。保護犬の譲渡は6%ほど、保護猫の譲渡は15%ほどとなり、入手先としては低位にとどまっている。

 ペットを飼いたい人が保護犬や保護猫の中から探すことが一般的になるためには、保護犬や保護猫との出会いの場を日常的に設置することが必要だ。例えば、各地の動物園に保護犬や保護猫の展示スペースが設置されれば、多くの人が保護犬や保護猫と対面することが容易になる(保護犬や保護猫の飼育管理や譲渡は動物愛護団体などが行い、動物園は場所を提供するだけ)。