望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

アメリカは変わった?

 こんなコラムを2002年に書いていました。

 2001年の「9.11以降、世界は変わった」との言葉を時折見かける。アメリカという世界最強の軍事大国には冷戦の終えん後、もうブレーキ役がいなくなり、したいがままにさせているという意味では何も変わっていない。ただ「したいがまま」の内容が変わった。

 冷戦期には、「したいがまま」といっても、そこには共産国家(共産主義者)の世界的な影響力を削ぐという暗黙の前提があった。それが冷戦終えん後、湾岸戦争で見せた圧倒的かつ高度な軍事力を誇示しつつ、アメリカの利益のみを露骨に追求するようになった。

 9.11でそんなアメリカの何が変わったのか。世界各地のゲリラやテロリストを、共産国家の影響力がなくなったから「もういいや」と放置し、その結果、アメリカから見て「世界の辺境」で「勝手に騒いでいる連中」が力を貯え、NYをも襲うようになった。アメリカ=世界だとふんぞり返っていたアメリカはパニックに陥り、まずは復讐、次には「世界の辺境」が、グローバルする現代では、アメリカ中枢部に害を与えることがあると認識を改め、「世界の辺境」をアメリカのためにコントロールしようと考えた。

 つまり、アメリカの利益のみを追求することは変わっていないが、そのために「辺境」までも含めて世界をコントロールしようと決めた。

 独善的でいやな奴だが、力は強いし、金も持っているし、口うるさいから、好きなようにやらせておけ……。そんなアメリカが、アメリカにとって危険な連中のいる国は国ごと“やっつけてしまうぞ”との姿勢に変わった。

 そうした意味でアメリカは変わったといえるが、本質は何も変わっていない。強力な軍事力と経済力にモノを言わせ、アメリカ人とアメリカの利益第一に世界で人々を踏みにじる。