望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

ギャング・オブ・ニューヨーク

 こんなコラムを2003年に書いていました。

 はい、またお会いしましたね。今日の映画は「ギャング・オブ・ニューヨーク」です。これ、マーチン・スコセッシ監督の、大金をかけた大作なんですね。

 この映画、いきなり男達が斧やナイフ、棍棒をもって集まり、まあ、殺し合うんです。怖いですね。腕がとれ、肉が割け、血が飛び散るんです。最初のツカミだけかと思うと、これがまあ違うんです。ずう〜っと、なんですね。

 南北戦争の頃のNY・マンハッタンが舞台なんですが、何でこんなに荒れていたかというと、移民同士が対立していたんですね。独立前に移民した連中の子孫がネイティブを名乗り、アメリカ独立後の移民、特にアイルランドからの移民を目の敵にしていたんです。ネイティブというからインディアンかと思うと、これが全く関係ないんですね。

 この映画、ある時代のある場所、それをそっくり描こうとした映画なんですね。主人公を設定して、それを中心にお話を作るという映画手法とは違って、歴史の1断面を切り取ろうとした映画なんですね。セットも当時のマンハッタンの一郭をそっくり再現したのでしょうから、お金がかかるはずですね。大味だという評価もあるようですけど、2時間半でよくまとめたと言うべきでしょう。4時間くらいあれば、大作にして名作になっていたかもしれません。

 大作だから、お客を集めなければなりません。でも、アメリカ国内の移民同士の対立だというと、日本ではお客は入りませんね。だから、まあ、うまいことにディカプリオが主演していてラブシーンも少しあるから、宣伝の人は「タイタニック」を思い出したんですね。それで、「愛の〜〜」とコピーを作り、キャメロン・ディアスとのキスシーンで売ることにしたんですね。そんな宣伝を真に受けて観にきた女性客は、映画館からの帰り道、「なんか違う」とつぶやくんですね。

 それでは、またお会いしましょう。サヨナラ。サヨナラ。サヨナラ。