望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

霞が関にキョーボー罪

 こんなコラムを2006年に書いていました。


 北海道警が組織的に裏金づくりを続け、巨額の税金をちょろまかしてきたことが北海道新聞等の奮闘努力により明るみに出たが、この裏金づくり、実は全国の警察組織でも同様に続けられているものだという。警察だけではなく検察庁や外務省などにも疑念の目が向けられたが、全国紙が積極的に動かないためもあって、うやむやのままだ。おそらく、大半の官庁で裏金づくりが行われているのではないかという疑念が湧くが、実態は闇に閉ざされたままだ。


 そんな裏金づくりにメスを入れようという動きが当の霞が関から出てきた。それがキョーボー罪を新たに作ろうという法律案で、成立へ向け政府・与党は強行採決も辞さない構えだ。財政に巨額の借金を抱え、人々に負担増を次々に求めざるを得なくなり、人々から理解を得るためには自ら襟を正し、税金の支出先を全て明確にして、1円であっても無駄な支出、不明瞭な支出を認めないと霞が関は心を入れ替えた。


 裏金づくりは個人や何人かだけで行えば公金横領の犯罪であるが、組織ぐるみで行えば「慣習」となり、官庁の組織防衛の論理が法律を超越する。そうして裏金づくりは続けられてきたのだが、作られた裏金も、異動の度にキャリア官僚等の餞別に過半が持っていかれ、裏金づくりを担当するノンキャリには見返りが少ないばかりが、露見すれば責任を全て引っ被らざるを得ない。こうした状況にノンキャリ層から不満が滲み出し、機を見るに敏なキャリア層が「このままでは内部告発が各地で噴出しかねない。北海道警の二の舞になる」と危機感を強め、一気に裏金撤廃に動き出した。


 もちろん「裏金づくりはもう止めます」などとは表明できないので、国際越境組織犯罪防止条約批准により国内法整備が必要になったとして、キョーボー罪を新設、霞が関を始め全ての官庁もその対象とした。これで組織ぐるみ、官庁ぐるみの裏金づくりはキョーボー罪に引っかかるので、裏金づくり防止へ全官庁の管理職は目を光らさざるを得なくなる。


 ただ、そこはキャリア官僚、権限強化の機会は逃さない。法に抵触することが会話に出ただけで罪を形成するというキョーボー罪を幅広く適用できるようにすることを忘れなかった。官僚の天下り先の公益法人等や企業が絡む官製談合もキョーボー罪の適用を受け、複数の官僚による収賄もキョーボー罪により未然に逮捕できるようになり、選挙時に置ける後援会等による組織的な買収・選挙妨害等もキョーボー罪により未然に阻止できるようになるという。また、憲法遵守義務のある公務員が複数で憲法に反する行為を行おうとした場合もキョーボー罪の適用を受ける。


 もちろん、この国の常により、キョーボー罪は官よりも民に一層厳格に適用されるだろうことは間違いない。