望潮亭通信

無常なる世界を見るは楽しかり

ステータスシンボル?

アトム  「イスラエル核兵器保有が黙認され、インドの核兵器保有が容認される一方で、北朝鮮の核実験には国連が制裁決議を行った。どこが違うんだろう?」


ウラン  「アメリカとの親密度ね。アメリカの影響が及ぶ国の核兵器なら許容されるということかしら」


アトム  「それなら、アメリカべったりの政権の日本にも核兵器保有は許容されるということになりそうです」

秋葉原博士「日本の場合はどうかな。米軍基地が日本各地にあって、核兵器もどこかにあるかもしれず、日本が核兵器保有する必要はないというのがアメリカの考えだろう。それに、工業水準の高い日本が核兵器を作ると、アメリカより高性能のものを保有するようになるかもしれないから、アメリカは許さないかもしれない」


ウラン  「でも、日本の政治家が核兵器保有の議論をするべきだと言ったりするわ」

秋葉原博士「核兵器保有は、『戦後』否定の保守派共通の願望かもしれない」


アトム  「核兵器保有して日本は何をするのですか?」

秋葉原博士「誰もそこには触れない。隣が持つならウチも、って調子だ」


ウラン  「核兵器ってブランド品と同じみたい。ステータスシンボルってことかしら」


アトム  「核兵器は抑止力になるんですか?」

秋葉原博士「どの国も使うのをためらう間は核兵器は抑止力になるが、どこかが使うと、核兵器は攻撃兵器でしかなくなる。北朝鮮がどこかに向けて核兵器を使うと、即座に核兵器で反撃されるだろう」


ウラン  「日本が核兵器を持った場合、どこに向けるのかしら? 北朝鮮? 中国? それともアメリカ?」


アトム  「日本が独自に核武装するとアメリカとの関係は冷え込むだろうから、アメリカも標的の一つになるかもしれませんね。でも、そもそも日本が核武装することに何のメリットがあるのですか」

秋葉原博士「アメリカとの関係を壊してまでも日本が独自の核武装をすべきだと腹を決めている政治家はおるまい。北朝鮮をダシにして、自分の勇ましさをアピールしてみたいだけかもしれないな」


アトム  「核拡散が好ましくないという考えから包括的核実験禁止条約(CTBT)が96年に国連で採択されましたが、アメリカが批准しないので宙に浮いたままです。核不拡散条約(NPT)非加盟国が核兵器を持つと決意して行動すると、国際社会は無力です」


ウラン  「北朝鮮のケースが容認されると、世界中に核実験実施国が増えかねないわね」

秋葉原博士「問われているのは、核拡散についてどう考えるかということなんだ。それぞれの国の判断で核兵器保有してもいいと考えるのなら、日本の核兵器保有北朝鮮核兵器保有も認めるべきだろう。核兵器保有国を増やしてはいけないとするなら、北朝鮮核兵器保有も日本の核兵器保有も許されないと考えるだろう」


アトム  「日本は核兵器保有してもいいけれど、他の国の核兵器保有はいけないとするのは確かに矛盾ですね。でも、こんな調子で核兵器保有国が増えて行くと、いつか歴史は繰り返すのではないですか」

秋葉原博士「おそらくな。悲惨な殺し合いを人類は延々と繰り返し続けている。核兵器だけが二度と使われないと考える根拠はない」